盆石 1 ーお盆の木地ー

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盆石 1 -御盆の木地ー

 

昨年、知り合いのお寺さんから、盆石用の御盆を作って

いただけないでしょうかとご依頼がありました。

あまり聞きなれない、盆石という遊び、 実は何度か私

はそのお寺でお盆に砂で描かれた絵を見ていたのですが

そういういきさつから改めて盆石を知ることになりまし

た。

日本人には馴染みが薄く、知っている人も少ないようで

周りの人にも聞いてみたら、日本ではなくスペインで日

本の盆石展があってそれを見たと、いう人もいました。

 

盆石は真黒の楕円形の漆の御盆の中に様々な風景を砂を

使って表現する砂絵です。

漆の深い黒を白の砂が入ることで黒はさらに深みが出て、

海岸になったり、霧がかっている山になったり、描く人

により 絵に特徴があらわれたりして見ていると私も思わ

ず挑戦してみたくなりそうになります。

お寺さんは90年ほど前の真黒の楕円のお盆を使ってい

ますが、そのお盆が大変お気に入りなので同じ形のお盆

をいくつか そろえていきたいと、以前から考えておられ

市販の御盆では思っていたようなものが無いので、私に

木地だけ造ることは可能ですか、 と依頼がありました。

 

それで、私より適した、指物師に木地をおまかせしまし

た。

漆のほうではお寺さんの知っている方がいらっしゃる事、

私は傍目でそのやりとり傍観していました。

頼んであった木地が昨日、出来上がりましたので、私も

一緒に見に行きました。

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木地の状態は杉板の正目で、木目もまっすぐ、きれいな

状態、漆を塗るのはもったいないくらいです。

3枚作られましたので、元々の一枚を合わせると完成時

には春夏秋冬それぞれの風景を一堂に並べることができ

ます。

漆は沢山年を重ねると、その性質上黒の漆でも少しずつ

透明感がでてきますので角度をつけてみると、少し木目

が見えて、 それがまた漆好きの心をゆさぶります。

古いものを集められ、眼が肥えた方でしたがとても満足

しておられ私も安心しました。

 

今は木地の状態ですが、今後さらに漆職人の手に移り、

完成時のお盆が今から楽しみです。

そんな盆石、資料は少ないようですが歴史は古く、唐

・漢の頃、占景盤或は縮景盤と称された技術が推古天

皇の頃、伝えられたようです。

それが天武天皇(在位673~686)により日本の

盆石として完成され、お茶やお花と同様に宮廷の 女官

たちの間で流行っていました。

天武天皇以降の盛衰については不明な点が多く、次に

盆石が登場するのが室町時代です。

足利義政のころに再興され以来、活発に行われてきた

といいます。

江戸時代の文化文政のころには、盆に詠歌を添えるこ

とが流行していました。

 

戦後、衰退の様子をみせたものの、折からの日本伝統

ブームの中で少しずつ活力を盛りかえし今に至ってい

ます。

                                                                                        続く