龍門石窟 如来仏頭の模刻の彫り進め方の全記録 その1

昨年の秋に大阪市立美術館で開催された、特別展 「仏像 中国・日本」を見に伺いました。

見本とする如来仏頭はその展覧会で拝見いたしました「河南・龍門石窟奉先寺洞将来」の唐時代(8世紀)の如来仏頭です。

古い中国の仏像ではあるのですが、日本で見た覚えがあります。

彫刻ではないのですが東寺に伝わる古い両界曼荼羅の胎蔵界曼荼羅大日如来象と、奈良・東大寺の大仏の銅製の連弁に刻まれた毘盧舎那仏のお顔です。

以前よりそれらの顔が丸みがあって、目が切れ長、表情大変清らかで、いつか彫ってみたいなと考えていたのですが、美術館でお顔を拝見した時に、これだと思いました。

時代もだいたい同じなのでおそらく、当時の日本はこのようなお顔も参考に仏像を彫っていたのではないかと想像いたします。

図録を手に入れて、如来仏頭の正面写真一枚だけを使って彫り進めました。

耳の位置は、標準的な仏像を参考に後頭部は鋸の跡を残して荒削りで石造風に仕上げる予定です。

下記の動画は粗彫りまでの工程です。

 

 

 

 

インスタグラムで登校した仏頭の詳細画像

今回の仏頭はかなり気合を入れて制作しました。

こんなことを言うといつも気合を入れていないみたいに聞こえますが、インスタグラムに投稿すると反応も早く見てくれている人も格段に多いので、人の目線をいつもよりもかなり意識をいたします・

そういうこともあり、多くの人が見ていると思うといつもより気引き締まります

先に上げた動画は、インスタグラムにも投稿していますが、インスタグラムには15秒の時間制限があるために、それ以上に長くなった部分をYouTubeやフェイスブックに投稿させていただきました

以下写真のみですが、画像だけでも参考にしていただければと思います。

 

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セイタロウさんの荒彫り像 4

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黒目も彫りだして表現してます。

目は本当に難しい、荒彫り仕上げなのであまり手数をかけられない、この段階ではバランスを考えてどこを彫ればバランスがとれるのかを考えて一刀ずつ彫り進めます。

 

 

 

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横顔は想像で彫刻しています。

鼻先と耳との距離感を考えながら、まだ耳の形は決めません。

 

 

 

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わずかに目元を修正してます。

 

 

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ほぼ横顔が決定しましたので耳の位置を決め、耳穴を基準に彫刻しました。

 

 

 

 

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セイタロウさんの荒彫り像 3

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顔の表情をだします。

私は写真を見て確認しながら彫刻をしていますが、あまり細かく計測せずに雰囲気を感じ取りながら表情を出しています。

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仏像と彫り方はそう変わらないですが、若干鼻に対して目の位置が高くなっています。

 

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耳の後ろは余裕を持たせています。

顔の表情を形作るときに徐々に耳の位置を決めるのでこの段階ではまだ決めません。

 

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後ろは想像で作っています。

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眉と目の間の溝を彫刻するときに仏像と違って人の顔の場合、溝を目尻の上まで通さない方が良いです。

 

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目を描いていますが、この段階では調子を見るだけなのであまりきっちりとした下絵ではありません。

黒い目を描く事で基準が明確に見えてきます。

顔の基準は黒目の位置だと思います。

黒目の位置を決めて目を少しずつ開けて、鼻の位置、鼻と口の関係などがはっきりとしてきます。

すべては黒目を基準として見てみるととても理解しやすくなります。

 

 

 

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初めての顔出し動画撮影 (お地蔵さんの仏頭を彫る)

 

初めて顔出し動画を撮影しました。

お地蔵さんの仏頭を木取りの状態から仕上げの手前まで多少のカットがありますが、木彫りをしている様子はすべてカットなしで撮影しています。

カメラが向いていると意識が思った以上に分散して、途中カメラから離れてじっくりと表情をつくろうかとも考えたのですが、それだと全ての彫刻を撮影できないので私が見る立場だったら面白くないだろうと思って、ひかえました。

後から見返すと、緊張してしゃべっているのがよくわかります。

そして、彫刻している手元もよく見えていなかったのが動画を見返して残念だったなあと思います。

動画撮影は彫刻を彫りたい皆さんのためというよりも私自身の勉強になってしまいました。

一人で黙々と彫りながらしゃべるのがどれだけ難しいのか、本当に実感としてよくわかりました。

今回の動画は下の画像の一番小さなお地蔵さんを彫りました。

仕上がってはいないのですが、次回仕上げる行程を撮影してみたいと思います。

ただ、永遠と小刻みに仕上げているだけなのでよっぽど木彫が好きな人でないと面白くない動画になってしまうと思います。

 

 

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セイタロウさんの荒彫り像 2

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今回の人物の彫刻ですが、資料は正面の写真のみです。

ですので顔の奥行きは憶測で彫るしかないのですが、完璧に似せるつもりはなかったので、一般的な人物の横顔を参考にしながら正面の顔と違和感がないように調整します。

まず最初にセイタロウさんの顔写真をプリントアウトして木に合わせます。

 

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顔写真のプリント紙と木の間にトレース紙を挟んで輪郭線をなぞって描き木に写します。

大雑把に描いているので、あとで目鼻口を描き足します。

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輪郭線をカットします。

後ほど若干の大きさの問題があったのですが、頭の高さが少し低かったのですが、これはカメラとの距離が近くで撮影された場合顔の表情が近くになります。

そのため顔の表情以外が少し小さく映ります。

実は人物を彫刻するときは以前も同じ問題があったので今回は僅かに余裕を持たせていたつもりなのですがまだ足りなかったようです。

もし顔写真を使って木彫りをされるときはカメラの距離が近い場所で撮影すると、少し顔の表情が大きく映りますのでその事をふまえて制作してみてください。

下の画像では斜め横からみるとかなり奥行きに余裕を持たせています。

 

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第一刀目です。

 

 

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耳の位置は、仏さんの寸法よりも若干余分に印を付けました。

幅の3分の2が仏さんの耳の奥行きです。

今回の人物の耳の奥行きは仏さんの位置を基準にすると耳と顔が近すぎるので、少し耳の位置を奥にします。

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顔の四隅をの角をカットして徐々に丸めます。

 

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セイタロウさんの荒彫り像 1

 

まずは動画から

今回は彫り跡を荒々しく残した肖像彫刻にしてみました。

彫刻を長い間していると、奇麗な仕上げにはお腹いっぱいになっていて、荒彫りを挑戦してみたくなります。

かといって粗彫りをやってみようと思ってもなかなか彫ることに慣れていない人はむずかしいです。

というのも、形を作り出して行く行程で迷いがおきては、ちまちました彫りになり一部が奇麗に仕上がって全体としてアンバランスな彫刻になります。

特に目の周辺は彫りの回数を出来るだけ減らして仕上げなければいけないので、いがいと粗彫りは難しいです。

モデルとなっていただいたセイタロウさんにはまだ彫刻をしても良いのか聞いていなかったのです。

昨日思いつきで彫刻して3時間程で出来上がって、そのまま勢いでYouTubeにアップしました。

一応本人に似ているかどうかはここでは、控えておきますが、しかしこの木彫りの彫刻よりも男前なので、それだけは一言お伝えしておきます。

肖像彫刻は面白いもので、むかしからある肖像彫刻もおそらく同じだと思うのですが、本人に似ているかどうかはともかくその人の生き様を刻む事になります。

生き様というのは、物事対する真摯な姿勢であったり、たくましさであり、また弱さでもあったり、情熱的であり臆病であったりと、人それぞれどんな人でも長所だけではなく短所も持っていると思います。

長所だけをみて肖像彫刻として刻んでもきっと、深みのある表情は出ないように思います。

そのまなざしには、厳しさや優しさ気品をそなえていたり、また許してあげるおおらかさなど、まなざしの中から人柄を感じ取れるような眼差しを表現してみたいと思いました。

 

 

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次へ (彫刻スタート)

 

木彫りのセイタロウ

 

いつも大変お世話になっている、セイタロウさんの肖像彫刻を作ってみました。

セイタロウさんは私のブログでは英訳をしていただいて本当にいつも助かっています。

本当にありがとうございます。

今回の木彫りのセイタロウさんは荒彫り仕上げにしてみました。

荒彫りは意外に難しい彫り方で、手数をいかに減らしてピンポイントで彫り上げるかが試されます。

特に細かな顔の表情を形作るときも微調整の回数は限られます。

迷って何度も修正が出来ないので、最初の彫りが肝心になります。

皆さんがよく気になっている制作時間ですが、ちなみに今回は3時間ぐらいです。

私が作るとどうしても僧侶の風格になてしまうのですが、本人は私よりもだいぶ若く、木彫りの彫刻よりももっと男前ですよ。

セイタロウさんの詳しい記事はこちらにリンクを張っておきます。

英訳者セイタロウとは

仏像の表情(目、鼻、口)3

前のページと同じ動画です。

確認の為に貼付けておきました。

 

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小鼻の幅を決めます。

この小鼻も少し幅が広めですが、彫っていくうちに若干幅が細まっていきます。

そして小鼻のラインを鉛筆で描きます。

鼻の穴は僅かにへこんでいますが、無理にへこまそうとすると穴が目立ってしまいます。

ですので、彫る自信がない場合は小鼻の穴は小鼻の幅がしっかりと決まってからにしますが、私は今の段階では下線を描いてまだ彫りません。

後で、おそるおそる僅かにへこませます。

 

 

 

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額についている丸い白豪は本来ならばもう少し厚みを残したり、また穴を彫ってそこに丸く削った木や水晶などを差し込んだりしますが、今回は表情を彫る練習なので白豪は僅かに浅く彫る事にしました。

あると表情をとらえるのが難しい場合はなくてもかまいません。

後で丸い木を貼付けても良いと思います。

そして、古い仏像でも水晶などがはめ込み式になっている仏像が多いのですが、人によっては額に穴をあけるのをあまりよく思われない方もいらっしゃいます。

私もどちらかと言えば心情的に額に穴を彫りたくないのですが。

 

 

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この段階はどう説明していいのか本当に頭をかかえます。

うまく説明できないといけないのですが。

つまり鼻と小鼻の間を浅い丸刀を目の方向に斜めに彫りますが、その中で途中をややへこめたり、小鼻と鼻の間を丸刀で通すときに鼻と小鼻の区別が一発で見えるように彫る事、などその一刀で微妙な表現をしなければいけないのですが、かといってこの通りにしても絶対にうまくはいきません。

ですので最初は慎重になって何度も何度も繰り返しになると思いますが、上記の事を意識しすぎずに、まずは自分のやり方で一度挑戦してみてください。

 

 

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首についた三本の線、三道と呼びますが意外と難しいです。

首の皺のような弾力感を表現するのですが、耳の下で徐々に消えていきます。

最初は深く彫ってしまいがちですが、深く彫らずに、浅めにおさえます。

 

 

 

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徐々に仕上げにとりかかります。

 

 

 

 

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完成

 

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仏像の表情(目、鼻、口) 2

前回と同じ動画です。

確認の為に貼付けておきます。
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眉と目をわけていきます。

ここで初めて丸刀を利用します。

まずは目の半分ぐらいまで眉との境目彫り進めて徐々にのばしていきます。

 

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眉の位置は下線よりも下にしています。

眉も徐々に所定の位置に上げていきますが、まずは余裕を持って下位置から彫り始めています。

 

 

 

 

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左目の周辺も同様に彫り進めます。

 

 

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この段階ではまだ耳が出てきていません。

耳を出すために、まだ顔は細くなります。

顔を細くすると、目鼻口の感じが変わってきますので徐々に修正します。

その為に最初から目鼻口に余裕を持たせていました。

 

 

 

 

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耳を出すために顔の幅を少しずつ細くしていきます。

 

 

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目は内側を少し上げています。

荒彫りの状態で仏さんらしい表情にするのは難しいのですが、このときに色々と表情をためしていきます。

 

 

 

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私は荒彫りの段階から目を出しています。

しかし、この状態が最終的な目の位置ではなく、目を薄らと削る事によって基準が出来ます。

全体的にどこを彫れば良いのかも明確に見えてきます。

鉛筆で目を描いても良いのですが、しかし彫って見た場合と、鉛筆の線で見た場合とでは全く同じ線でも違った雰囲気に見えます。

それで私は最近このように目を薄らと彫って確認しています。

 

 

 

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