仏像光背の修理 2

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古い光背の修復 2 木屎漆(こくそうるし) 前回、光背の接着そして接着の盛り上がった部分の削りおとしまでしま した。 今回は隙間に木屎漆をつかって埋めていきます。 私が使う木屎漆は、彫刻で使う檜(ひのき)の粉を鍋で熱を加えて焦げ る一歩手前まで熱を加えて焦茶色にしたものを使っています。

 

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熱を加える理由は、熱を加えることにより木に含まれる水分を減らし、 そして木の痩せを防ぐ事が目的で、それにより強度が強くなり経年変化 を防ぐことができます。 焼いた檜の粉の事を、焼き挽粉と呼んでいますが、この焼き挽粉に少し の水と漆を加えてヘラで均等に混ぜていきます。

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奈良時代、脱活乾漆像(だっかつかんしつぞう)という造り方で仏像が造 られましたが、造り方は大まかに粘土で形を造り、その上から麻布を漆 で固めて内部の粘土を取り出して、その上から木屎漆(さらに藁や繊維 質のあるものを含める)を盛り上げては整えて彫り、また盛り上げては 整えてを繰り返しをして仕上げていきます。 この方法で造ると丈夫で軽い仏像が出来上がります。 お寺で火災がおきても、早期で発見できれば少人数で素早く避難をする ことができます。 また仏像の制法では当時から貴重な漆をたっぷりと使うとても贅沢な制 法でまた多くの手間と時間がかかります。 見た目は粘土で造ったような質感で随所に木彫のような鋭い硬さではな く、粘土の柔らかみを感じることができますので、触ると人肌のように すこし弾力があるのかなと思わせるような質感、そういうところを木彫 で表現できればと思いますが、なかなか難しい。 漆は梅雨時期に固まるスピードが早く、ある程度の暖かい温度と湿度が 必要なのですが、冬場はそのスピードは格段に落ちます。 それだけ季節により大きく影響を受けますので、木造で造る制法が確立 すると、ほとんど造られる事がなくなりました。 季節による影響を受けないように漆職人さんの工房には漆風呂(むろ) と言われる温度と湿度を調整した部屋がありますので一年を通して作業 をすることができます。 私は漆風呂がありませんので寒くて乾燥している時期にはダンボールの 中にお湯を入れたポットをおいたりして温度と湿度を調整いたしまし た。 その他、いろいろと試しましたが、今では急ぎの仕事ではないかぎり、 何もせず時間をかけて自然に任せて固めていきます。

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手元に小さな木べらがありませんでしたので手元にありました割り箸を 彫刻刀で使いたい大きさにまで揃えてヘラを作りました。 今回の光背の作業は盛り上げまでしましたが固まり次第、次回は錆漆を 使う作業をしたいと思います。                                                                                                         合掌

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