仏像の持物 愛染明王の矢 1

 

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仏像の持物

愛染明王の矢 1

最近、縁あって両頭愛染(りょうずあいぜん)尊像を調

べています。

両頭愛染とは愛染明王と不動明王像を合体させたお像

で両頭明王尊像とも呼ばれています。

愛染明王の六本の腕と不動明王の二本の腕、合わせて

8本の腕を持ち、その持ち物も、 愛染明王の五鈷杵、

鈷鈴、弓、矢、蓮と、不動明王の剣、羂索を持って

います。

両頭愛染尊像の詳しいことについては別に紹介したい

と思いますが、あまり注目されない 仏像の持ち物の中

でも矢について調べていました。

例えば、平安時代として紹介されている仏像があると

ます

しかし、台座、光背、持ち物まですべて残っている事は
奇跡に近く、多くの仏像は一部修理 されていたり、また、

胴体と顔以外はすべて後補であることも珍しくありません。

 

仏像の持ち物となったら、まず最初になくなってしまった

り、折れて紛失する可能性が非常に 高く、当初の形を保っ

ていることは非常にまれなことであります。

愛染明王と両頭愛染は同じく弓と矢を持っていますが、こ

の矢の形が同じ愛染明王の中でも形が様々で迷うところで

す。

矢の先の鏃の形が画像のような先の形か、ハートマークの

とんがったところを前にしたような形か、あるいは三鈷杵

の片方の形 になっていたりします。

また、矢に使われている、羽は三枚羽もしくは4枚羽、たま

に2枚羽です。

こういった迷った時には、古い仏画を見てみます。

白描といわれる墨線だけで表現した、愛染明王の画を見ます

と、ほとんどが、画像のような形をしています。

鏃のすぐ後ろには少し膨らんだところがありますが、これは

笛の役目をしていて、音を出します。

画像のような鏃の形は刃が内側に付いています。

これは、敵の船の帆の縄を切る役割を果たしております。 画

では表現できなかったと思いますが、三枚羽だと矢が回転して

より正確な軌道を通りますが、矢が回転してしまい、船の縄

を切ることは難しいので これを4枚羽にすることで、回転を

抑え縄を切りやすくなります。

また、鏃のすぐ後ろの膨らんだ笛は、敵の馬を驚かすための

ようです。

                                                                                                      続く

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胎蔵界34 不空羂索観音菩薩尊像

  不空羂索観音菩薩尊像  (梵名:アモーガパーシャ)

 

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この菩薩さまは不空羂索観音菩薩(ふくうけんじゃ

くかんのんぼさつ)です。

蓮華部院という枠の上から四番目の向かって左側

に佇んでいます。

頭にかぶさっている宝冠には化仏という小さな仏

さまが、表現されています。

お顔は三面あり、またそれぞれに額に目がありま

す。

そして腕は四本あります。

左手の第一手(胸前)には開いた蓮の華をもち、第二

手に羂索があります。

右手の第一手(胸前)には念誦をもち、第二手に澡 瓶

(そうびょう)という水がめを持ちます。

鹿の皮の衣を着て、赤い蓮華に坐ります。

羂索とは網と釣り糸ののことで、大きな慈悲の網で

苦悩にあえぐ衆生という鳥を捕らえ、また利益をも

たらす釣り糸で苦海にさまよう魚を釣り上げる働き

をします。

そのような働きが空しくないので、不空羂索の名前

があります。

ほかには羂も索も、ともに衆生を彼岸に導く縄であ

るとする説もあります。

この尊像にはほかにも、お顔が一面、十一面、そし

二本、六本、八本、十本、十八本などと異なった像

が多いようです。

ある経典によると、孝行な息子が母親の盲目を治す

ために、鹿皮を着て鹿も乳を求めていました。

そんな中、狩人が鹿の皮を着た孝行息子を誤って射

ってしまいました。

神々は彼を哀れみ、蘇生させて母の眼も癒しました。

この孝行息子がこの尊の前世であったようです。

そういった因縁によりこの尊は鹿皮を着ともいわれ

ています。

獣の中でも鹿は特に子を思う気持ちが強いようです。

合掌

 

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茶道具の修繕 ー携帯用の茶杓ー

 
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茶道具の修繕  ー携帯用の茶杓ー

 

 

私の茶道仲間に、骨董屋さんにお勤めの方がいらっし

ゃいます。

その方は若いのですが、昔から日本の古い道具を日常

生活に取り入れて楽しんで使われています。

たまにその方の古い器を金継していますが、今までい

つ直したのか覚えてないくらいです。

今回は今までとは違い、携帯用に折りたためる茶杓を

直します。

現状は芯の部分が緩くなっているために使うのが難し

い 状態です。

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この茶杓は茶筅の入れ物に収納されているようですが、

上の写真に見られるように、入れ物に小さなU字形の

黒い金属があります。

よく見かける茶道具ではあるのですが、漠然と見てい

たのか、 どのように収納されているのか見当がつ来ま

せん。

そのためこのU字の金属に茶杓を差し込むのではない

ろうかと勝手に想像していました。

自分の思い込みですぐに取り掛からなくて良かったと

今ほっとしていますが、もう少し詳しく調べると茶筅

の裏に収納するのだと、理解できました。

そしてU字の金属の部分は組みひもを通す穴だとわか

りました。

早速取り掛かってみます。
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まずはゆるくなった芯の部分を取り替えます。

良く見かける携帯用の茶杓の芯の部分は黒くなっ

ています。

おそらくU字の部分と同じ材質の物で固定されて

いたのだと思いますが、この茶杓は前の持ち

方が、即席で芯の部分を竹で修理されたのだ

います。

量産されている茶道具と違い、茶筅の入れ物と茶

杓はとても上品な半透明の朱色の漆が塗られてい

ます。

前に使われていた人が修繕までして使いたいと

わせる、そんな茶杓、茶筅入れです。

最近のものではないと思いますが中に入っていた

茶筅は、オリジナルではないように思います。

茶筅は使っていくうちに摩耗していくのでそれは

仕方がないことですが、それだけ大事に使われて

きたことでしょうか。

後で紹介しますが、茶筅の中に茶杓を入れるため

裏から茶杓を差込んでみましたが入っていきませ

ん。

そのため、茶杓が収まるように少しずつ確認しな

がら穴を広げました。
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茶杓の芯は少しきつめの竹の棒を作り、少しずつ穴

に差し込んでいきます。

あまりきつく入れすぎると茶杓自体が繊維に沿って

割れてしまいますので、穴にさしていく力加減を

のぐらいで抑えるのか、きわどいところです。

ある程度入っていくと今度は二つとも同じ大きさの

穴なので、最初に差し込む方の穴をごくわずかに広

げます。

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穴を少し大きく広げましたら、最初に差し込む穴を

きつめに差し込んでいきます。

そうすると、次に貫通して差し込む穴は少し小さい

ので入っていきませんが、次の穴に入るように今度

少し小さめの穴に合わせてわずかに削り落としな

がら、きつく穴に入れていきます。

最後に飛び出した部分を削り落として茶杓の完成と

なります。

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完成した茶杓を茶筅の中に入れていくのですが、あま

り入っていきません

それで今度は茶筅の穴を広げていきます。

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茶筅に入りましたら、あとは組みひもを取り付け

て完成となります。

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携帯用の茶道具の歴史は古いようです。

南方録の「会」の中に夏越の祓い(なごしのはらい)

の野点の事が書いてあり、利休が加茂川の川べりで

野点をしていた様子がそこには記されているようで

す。

室町時代までさかのぼるような野点は当時と今とで

は、ずいぶんと違うものだったと思います。

私の知り合いに、コーヒー豆専門店をされているマ

スターがいます。

マスターは、仲間と一緒に大文字山をよく登られて

いて、頂上ではコーヒーではなく、抹茶を立ててい

るようです。

残念ながら私は、お相伴にあずかれませんでしたが、

山頂で戴くお茶は格別のものだろうなあと、想像し

ます。

そんな私は、山に登ると、携帯用のミルを使って挽

きたてのコーヒーを入れて仲間と一緒に休憩します。

コーヒーも、とても美味しい飲み物ですが、たまに

は趣向を変えて抹茶でもしようかなと、思ってはい

もののまだ実行するに至っていません。

また、野菜を届けてもらっている方がいるのですが、

野点の企画を考えている様子。

畑の真ん中で抹茶を立ててお客さんを楽しませたい

と、とても面白そうな事を言っておられる方もいま

す。

そんな野点は茶道の世界に気軽に入りやすいようで

外でお茶を立てるシンプルな道具は、カバンに入る

程度の大きさ、気軽な感じで良いですね。