不空羂索観音菩薩尊像 (梵名:アモーガパーシャ)
この菩薩さまは不空羂索観音菩薩(ふくうけんじゃ
くかんのんぼさつ)です。
蓮華部院という枠の上から四番目の向かって左側
に佇んでいます。
頭にかぶさっている宝冠には化仏という小さな仏
さまが、表現されています。
お顔は三面あり、またそれぞれに額に目がありま
す。
そして腕は四本あります。
左手の第一手(胸前)には開いた蓮の華をもち、第二
手に羂索があります。
右手の第一手(胸前)には念誦をもち、第二手に澡 瓶
(そうびょう)という水がめを持ちます。
鹿の皮の衣を着て、赤い蓮華に坐ります。
羂索とは網と釣り糸ののことで、大きな慈悲の網で
苦悩にあえぐ衆生という鳥を捕らえ、また利益をも
たらす釣り糸で苦海にさまよう魚を釣り上げる働き
をします。
そのような働きが空しくないので、不空羂索の名前
があります。
ほかには羂も索も、ともに衆生を彼岸に導く縄であ
るとする説もあります。
この尊像にはほかにも、お顔が一面、十一面、そし
二本、六本、八本、十本、十八本などと異なった像
が多いようです。
ある経典によると、孝行な息子が母親の盲目を治す
ために、鹿皮を着て鹿も乳を求めていました。
そんな中、狩人が鹿の皮を着た孝行息子を誤って射
ってしまいました。
神々は彼を哀れみ、蘇生させて母の眼も癒しました。
この孝行息子がこの尊の前世であったようです。
そういった因縁によりこの尊は鹿皮を着ともいわれ
ています。
獣の中でも鹿は特に子を思う気持ちが強いようです。
合掌