顔を奥に彫りこみ目の位置も微妙に決めていきます。
この段階ではまだ目の位置がはっきりしていません。
全体的にまだ修正がきく範囲内で彫進めているのでボリュームを持たせたいところ、削るところを鉛筆を使って描きます。
アニメの顔を彫刻するのは初めてなので試行錯誤しながらの状態です。
アニメの場合、はっきりとした色の区別で表情を表していますが、色を使わない彫刻の場合、非常に難しいと感じました。
鼻ほんの少し膨らんでいるだけで、唇もあるのかないのか、わかりにくいぐらい小さいので、できるだけ浅く彫ってみました。
ここまで小さいものを彫ると、特に表情は鉛筆の線があることによって表情がわかりにくくなります。
浅く彫った後は、幅1.5mmほどの平刀で小刻みに表情を整えていきます。
顔ばかり彫ると全体が見えなくなるので、その他の個所も気になった点を彫刻します。
この段階まで顔ができると、深追いしないほうが良いです。
一度、休息を入れましょう。
ここで、熱中しすぎて顔ばかり彫っていくと、やる気がある気持ちとは裏腹に当初の頭の中で思い描いた顔から遠ざかってきます。
この段階で、前髪のボリュームがあるので、角度によっては顔が陰になって見えなかったり、陰で表情が変わってきたりします。
そのため前髪も浅くしていきます。
着物のしわは、実際の着物のイメージ写真を見ながら彫刻すると良いと思います。
洋服とは違う雰囲気のしわなので、色々と参考にしてください。
仕上げの一歩前の段階の状態です。
手は顔の次に難しく、顔と手がうまく彫れると、見栄えがぐっと上がります。
逆に顔と手がいまいちだと、全体をどれだけ仕上げても、思っているような彫刻に近づくことができないぐらい重要な部分です。
手には抹茶椀を持たせています。
左手で抹茶椀の高台(底)を持ち、右手で添えています。
ここまで小さいと逆に難しいのですが、親指とその他の手で構成されていた手に4本の指を彫りだしていきますが、その前に鉛筆で指と指の間の溝を描きます。
シャープペンのほうが良いと思いますが、鉛筆も先を鋭利にすると描くことができます。
それでは溝を彫りだしていきます。
手が決まってきたら抹茶椀の淵を鉛筆で描き丸刀で浅く彫りだします。
顔も少しずつ幅1.5mmの平刀で小刻みに仕上げていきます。
香佛舎 木彫りの初音ミクのギャラリー
あともう少しです。
顔は目が難しいのは言うまでもありませんが、鼻、唇もそれ以上にもしかしたら難しいかもしれません。
初音ミクの場合、鼻は少し出ているだけなので、小鼻は表現していませんが、仏像などは鼻、小鼻、目と鼻の間の境目などは、何度彫刻しても難しく感じます。
おそらく、初音ミクの場合一番難しいのが唇ではないだろうかと思います。
アニメでは細くて小さな線で表現されています。
これを彫刻で表現するのは難しいだろうなと感じていました。
下唇をうっすらと表現することにしました。
完成です。
結局これだけ、彫刻刀を使いました。
後は、箱の表面を鉋で削り、真田紐を通して持ち運びもできるようになりました。
最後になりましたが、クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役の伊藤博之さんには大変感謝をいたしております。
初音ミクの著作権について販売目的以外の利用を自由にしてくださり、安心して彫進めることができました。
本当にありがとうございました。
そして初音ミクを通して木彫の面白さをみなさんと共有できたこと、私も大変励みになります。
また全身像も制作しましたので良かったらクリックしてのぞいてみてください。
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