金剛拳菩薩尊像(梵名:Vajrasandhiヴァジュラサンディ)
この菩薩さまは金剛拳菩薩(こんごうけんぼさつ)です。
二本の手を金剛拳にして胸に当てます。
不空成就如来の四親近のうちの一尊で、不空成就如来の北(曼荼羅図では右)に位置します。
この尊像のサンスクリット名のサンディとは密接な結合を意味し、手の指を堅固に結び合わせて握る働きを手で象徴しています。
それは一切如来の誓願の堅固であることの標幟(ひょうじ:目印)です。
指を堅く握ったこの形を金剛拳といいます。
金剛拳は金剛界の共通の拳の握り方なのでこの拳をつくるこの尊を一切如来拳菩薩とも呼びます。
十六大菩薩は、発願菩提心を体とする金剛薩埵から始まって、その修行は、この尊に至って、金剛去ったの三昧が一切如来の誓願を標幟する金剛拳印として現れます。
これは真言密教の修行者の理想の姿である金剛薩埵の修行の成就を意味します。
それゆえに十六大菩薩の最後に位置します。
金剛薩埵の目標は、自らには仏陀の一切智慧を獲得し、衆生には利益と安楽をもたらすことであるが、
そのためには自らが涅槃の境地に安住することはしない。
あえて衆生の苦しむ世間に身を置く。
これを無住処涅槃といいます。
仏菩薩の解脱した境地をあえて世間に結び付ける働き、すなわち無住処涅槃が、この金剛拳菩薩によって実現されます。
またこの無住処涅槃にあって衆生を涅槃の苦から解き放ち、安楽の境地の成就に結び付けます。
このように、金剛拳の堅固な結び合わせは、金剛薩埵の修行の成就を意味する第十六番目の尊として表されます。
合掌