わらじの制作 1 

 

いつもブログ造佛記をご拝見いただき誠にありがとうございます。
造佛記の英訳を担当させていただいております征太郎(セイタロウ)と申します。

今回は、海外のものづくりのご紹介をさせていただく、第一弾として、わらじ作りをご紹介させていただきます。

海外なのになぜ、わらじと不思議に思う方もいらっしゃると思いますが、実はこの記事で紹介しているわらじは実際にフィリピン国で日系アメリカ人の私の義父の手作りのワラジで、フィリピン国で実際に販売しているものです。

私の義父はわらじ作りをはじめて30年のベテランですので、今回の記事にする提案をさせていただいたのですが、恥ずかしいのか、「セイタロウ、お前がやれ」とのことですので、誠に恐れながらまだわらじ作りを始めて一ヶ月目の未熟な私がご紹介させていただく運びとなりました。

所先輩の皆様方から見るととてもお粗末な内容になっているかも知れませんが、暖かく見守っていただけましたら幸いでございます。

それでは、早速始めさせていただきます。

 

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上記の画像は、わらじ作りに使う道具一式です。
左から順に紹介させていただきますと、左端のものがたたき台代わりに使う木の切り株です。
これは、実は昨年度、とても大規模な台風が私の住んでいるフィリピンの町を襲ったのですがそのときに
倒れてしまった木を使っております。

年輪を数えましたら数えれる範囲だけでも80年の風雪に耐えた、私より大先輩の木でしたので、捨てるのは忍びなく、何かに使えるのではと、もらってきたものです。
もちろんたたき台は木の切り株である必要はまったくありませんので、丈夫で床を傷めないものならなんでも代用できます。

その隣はハンマーですが、実はフィリピンでは日本のような頭だけで売っている玄翁を見かけたことがない上、柄のすげ方もぜんぜん違うので、柄を自分で取り替えることも出来ません。

さらにその柄もプラスティック製や金属にゴムを張ったものばかりで
柄が木だけで出来ているものを探すのに苦労しました。

私のこのハンマーは金工用ですが、写真では黒く写っている柄の下部が別の材料のように見えますが、黒く色を塗っているだけで、一本の木から削りだした樫の柄がついています

ハンマーの右上にある、小さな丸いビンに入っているものは、蜂蜜のビンにろうそくを溶かして固めたもので、ワラのすべりをよくするために使います。
これは、我が家で仏壇に供えるろうそくの台が無かったので、その場しのぎで代用しているうちに自然と燃えカスが固まってこのように出来上がりました。

ビンの下に写っているハサミのようなものは、本来は何に使う道具なのかわかりませんが、丈夫そうなのでハサミ代わりに使ってます。

日本だとよい鋼を使った裁ちばさみが簡単に入手できると思うのですが、この国では残念ながら見かけませんのでこうしたものを代用します。

この写真に撮影するのを忘れてしまいましたが、之とは別に日本の100円ショップのような店で買ったはさみも使います。
ただ、理由があって使い分けているのではなく、実はこの写真に写っているハサミのような道具は先が太すぎ、わらの微調整で
先を隙間に突っ込むのが使いにくいから使っているだけです。
最後に右端に移っているのが、肝心のワラで、アバカというマニラ麻です
実はこのアバカ、フィリピンの特産品として輸出され、さまざまな場所で見かけることがあります。

最大の特徴は、丈夫であることです。
日光や水分にとてもつ強く、ちょっとやそっとでは痛まない上、水によく浮き熱を加えると柔かくなり、水分を吸い込んだ後、乾燥するとぎゅっと固くなる性質を持っています。

こうした性質が、船舶の係留用のロープに最適なようで、昔の帆船の碇をしばる縄にも使われていたそうです。
そして、なんと丈夫な性質から今の日本の紙幣にも使われています。

わらじの材料としてこれ以上最適なものはないのではないかと思えるほど素晴らしい素材です。

アバカで編んだワラジを私は日常生活で、荒れ果てたフィリピンのアスファルトの上で毎日はいていますが、破れたり、千切れたりしたことが一度もありません。

一年に一度、鼻緒を交換すれば、数年は持ちます
ちなみに底に引いているシートのようなものもアバカ製です
とても座り心地がよく、しかも滑らないので、作業中はこの上で座って作業します。

 

 

 

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↑20年前はグラムあたりの値段がが鶏肉と同じ値段だったそうですが、今では需要が増えたため豚肉と同じ値段になっています。

また、太さも種類があり、この写真の束は4ミリのものです。
基本この4ミリのものを使いますが、私の義父は編む量がとても多いので、別途3ミリの束を用意して、
その3ミリのワラをつま先に使うことで、つま先に上品な雰囲気を持たせています。

私は、4ミリのこのロールのなかでも、太さが相当ばらつきがあるので、3ミリの細さの箇所をあらかじめ切り出しておいてそれをつま先に使ってます。

それでは編み始めていきます。

 

 

 

 

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↑まずこのように足の親指と人差し指の間にワラを通してはさみます。
職人さんによっては、専用のワラを引っ掛ける木の棒がついた型をつかってワラを固定する人も
いらっしゃいますが、私たち親子は手と、足だけで編むことにこだわっています。
理由は、自分の手と足を時間をかけて道具に仕立てておけば、微妙な手先や足の指の感覚で
力加減が出来るようになり、また、ワラを引っ張って締め上げるときに足の指をつかって、ワラをしっかり固定でき万力のような力を自在に出せるようになるからです。

 

 

 

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↑ここで、先ほどのロウが登場します。
あとで、鼻緒になる部分を引っ張るのですが、相当力をこめて編みこんでいるので、
これがないと、全力でひっぱってもびくともしなくなってしまいます。

 

 

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↑足ではさんだワラとは別に、自分の腕いっぱいぐらいの長さのワラを切り出します。
この長さが編む上での基準となります。

 

 

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↑写真ではわかりにくいですが、一度手前で交差させ、左手でしっかりと固定し上から先ほど腕でいっぱいの長さに切り出したワラを使って編み始めていきます。

ちなみに、わらじ作りで一番難しいのはここです。
この部分はつま先になるのですが、ここをいかに美しく雰囲気のあるものにできるかで、仕上がりの雰囲気が大きく変わります。端的に言えば細かく編み込めば上品になり、太く荒めに編めば、男らしい雰囲気になります。

ただ、注意しなければいけないのは、どの編み方をしても、しっかりとワラをひっぱり、隙間から側面の骨組みとなる部分のワラが見えないようにしないと、とてももろいつま先になります。
そして、つま先が不完全だと歩くさいにも転倒などの危険があるので、ここは、人の命を預かる部分として
なんどもなんどもやり直しながら注意して編みます。↓

 

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↑ここで、足を横に広げて編んでいますが、こうして足を開いたり、閉じたりしながらつま先の横幅を調整
して編みます。余談ですが、なれないうちはとても、足の指の間が痛く、すぐ足がしびれてしまいますので
初めて挑戦するときは、やわらかい素材を使うか、休み休み、無理のないように挑戦してみてください。

 

 

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だいたい最初に切り出したワラが、四往復ぐらいすると、残り短くなってきて、片手だけで押さえ込むのが難しくなってきます。
そこで、ここまでにつま先の形をしっかりと作り、調整してから、抜けないように、鼻緒の部分になる、ひげ二本をきつく縛っておきます。

 

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↑編み方のコツですが、編むときは力をいれず、ふわっと重ねるように編み、一列編むたびに、しっかりと
手前だけに力をこめて、手を手前に、足を奥に突き出すイメージで体全体をつかって引っ張ります。
イメージとしては柔道の腕ひしぎ逆十字固めをかけるときのようなイメージです。

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イメージ画像
その後、左右均等になるよう、側面のワラをしっかり手前に引き寄せ調整します

 

 

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↑ワラが足りなくなったら、また腕いっぱいの広さにわらを切り出します。
編み終わりの箇所は、最後まで編まず一つ手前の下面にワラを出して終わるようにします。
継ぎ足すときに縛ることはしません。

 

 

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↑継ぎ足したら、同じように編み続けます。

続く。

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