わらじの制作 5 - 使い心地 大地とアースする(アーシング) - 

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ワラジの使い心地

今回、わらじの制作1〜4とブログでご紹介させていただきましたワラジは征太郎さんからプレゼントしていただきました。

なによりも嬉しいプレゼントです。

最後に今まで制作していただいたわらじを実際に履いた私の感想を記載させていただきます。

私のワラジとの出会いはワラジの制作の記事で掲載の協力をいただいた征太郎さんとのご縁がきっかけです。

それまで、履物としてワラジと履こうという発想がなかったのですが、征太郎さんから最初にワラジをプレゼントしていただいたときに私の今まで抱いていたワラジのイメージががらっと変わりました。

思っていた以上に丈夫で思っていた以上にカッコよくとても素敵なサプライズでした。

ワラジが届いた時は肌寒い日が続いていてなかなか履く機会に恵まれていなかったのですが、今は季節柄とても暖かく暑い日差しの日が続いていてますので、ようやく素足でワラジを履く機会が巡ってきました。

最近ではどこへ行くにもワラジが気持ちよく、人々がブランド品をさりげなく自慢して街中に出歩くように、私もわらじをさりげなく自慢して街中に出歩いています。(笑)

そして、これ見よがしに知人にワラジを自慢して歩きまわっています。

自転車をこぐと、金属のペダルでワラジがほどけたり切れたりするのではないだろうかという心配から自転車に乗る事を控えていたのですが、征太郎さんの力強く編み上げられた強い繊維のアバカのマニラ麻は大変丈夫でちょっとやそっとではびくともしなさそうでした。

それで自転車デビューをしたのですが、今のところ全然びくともしません。

これだけ強いワラジですが最初のは着心地は痛くて気持ちいい感じでした。

自分の足型に合うまでは少しきつい目だったのですが、3〜4回目に履いた時には徐々に収まっていたように思います。

きつくて麻のごつごつとしたところがとても気持ちよくて、もし麻のワラジをこれから履こうとされるのであれば、最初にわらじを履いた時にきつくて堅いと思うかもしれませんが、すぐに自分の足にあってきますので、ワラジを育てるつもりで履かれると、素晴らしいワラジに仕上がるのではないでしょうか。

良い物は作り手と使い手が育てる物ではないだろうかと思います。

買った時が一番良い状態ではなくて、持ち主が後に丁寧に育て上げてはじめて物がより良い物に変化していくようにも思います。

物が大量生産して作られるようになる前の昔の物は使いながら工夫を凝らしてそれぞれに使いよい物に育てあげられてるように思います。

私のワラジが今後どんどんと自分の足にフィットして、より良いものに変化していく事を実感しながら楽しく履かせていただきます。

そんな素敵なワラジ、本当にありがとうございました。

 

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ワラジの作り方は下のリンクに張っておきます。

ワラジの制作 1

 

追記

タイミングというのは恐ろしいと思う時があります。

実は征太郎さんからワラジを送っていただいたほんの少し前にArthing(アーシング)という言葉を知りました。

この場合のアーシングの意味は、大地と人が共につながっている状態です。

私たちが履いている靴の底はゴムで出来ている場合がほとんどです。

そしてこのゴムで出来た靴は人間がこの地球で生きてきた歴史でみると、つい最近の出来事です。

ゴムは絶縁体として電気を通しません。

すると、人間の中にある微弱な静電気が、大地と人間の間にゴムがある事で逃す事が出来ず、静電気が常に人間の体にたまった状態にあります。

静電気が溜まってくると、様々な体の不調が出てきて、それが病気につながったりします。

それらの病気は、裸足で大地を歩く事で人の体に溜まった静電気が大地に抜け出し、地球が人間を正常な状態に戻してくれます。

靴を履いて育った子供よりも、裸足の子供の方が健康的だということも言われているのもそういうところにあるのではないだろかと思われます。

大地とつながると人は自然に対して畏れ敬い、地球を大切に扱おうとします。

しかし人間は大地から離れる事で自然破壊をする事に対する心理的な抵抗を減少することになります。

科学技術を発展させて、自然よりもより快適により便利に生活環境を変えてきました。

しかし、自然を無視した発展は征太郎さんのように若い人達が何か違うんではないか、という事に気付きはじめている人が増えているようにも思います。

若者は田舎へいき、有機農業へ向かう。

少しずつではありますが、環境に対する敏感な人達が若者を中心に増えはじめているようにも思います。

それが、わらじ一つでもよくわかります。

今の50代以上の年齢の人達は、ワラジをみると昔の日本が貧しかった田舎のイメージを思い浮かぶ人が多いようにも思いますが、若い人は知らない事もあるかと思いますがわらじという履物を美しいと感じられます。

そしてこのワラジは環境を汚染する事無く自然に還ります。

私がアーシングとワラジが結びついたのは、征太郎さんからワラジが届き少し時間が経過してからでした。

 

気がついた時は、私は仏様から何か気付きを与えられたかのように大変感謝の気持ちがわき起こりました。

そんな不思議なご縁を頂いたワラジですが、これからも大切に履かせていただこうと思っています。

最後に、私がアーシングの事を始めて知ったy−チューブ動画を貼付けておきます。

エハンデラヴィさんがご紹介しています。

 

 

 

セイタロウ作のわらじが届く

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いつも造佛記の英訳をしていただいているセイタロウさんからワラジが届きました。

最初にいただいたわらじは裏にゴムがついていてそれが滑り止めになっていて、今回のは裏にゴムがなく100パーセントマニラ麻でできています。

実は履物としてわらじを履こうという選択肢が今までありませんでした。

最初に届いたわらじを初めて履いたときからその印象はガラッとかわりました。

麻が思っていた以上に丈夫で、履いていても結び方がしっかりとしているので履き心地にもほどけないという安心感がありました。

そして履いているうちに足のサイズになじんできてフィットしてきます。

そして、このごつごつした感じがなんとも気持ちがよいです。

そして今回送っていただいたのはセイタロウさんが作られたという事で大変愛着もわきます。

なんといっても裏に滑り止めのゴムがついていない100パーセントマニラ麻でできたわらじということで私にとって理想のわらじが手に入りました。

これからは滑り止めのゴムがついたわらじとゴムのないわらじを使い分けながら利用させていただこうと思っています。

 

本当にありがとうございました。

合掌

 

 

わらじの制作 4

わらじの製作の記事もいよいよ仕上げに入り今回で最後となります。

余談ではございますが、わらじはなにもアバカや、わらで編まなくてはいけないものではございません。
巷ではエコわらじといって、古着などをりようして編まれている方もたくさんいらっしゃるようです。
実際、私も今いただいた注文のお客様が、小さな女の子ということで、足が痛くなったらかわいそうだと思い
古着で鼻緒をしあげたところ、とても雰囲気のあるわらじになりました。

わらじは、編むのに何一つ、特別な道具は要りません。
必要なものは、根気と時間と手だけです。
そして、編み方は、たくさんの方法があります。

どれが正解というのはまったくないので、自分なりに、自分の足や手、使う素材にあった編み方
で編むのが一番良いと思います。

花火大会や、夏祭りが増えて浴衣などで出かける機会が増える季節になってくると思いますが、
今年は自分で編んだわらじで出かけてみるのも、粋でかっこいいと思います。

それでは、早速仕上げの説明を進めさせていただきます。

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↑前回、はさみの先で飛び出たワラを押し込んで調整した後です。
このようにまっすぐなるように仕上げます

このときに初めてつま先の形の左右を意識してすこし形作るようにします

 

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↑ハンマーを使ってたたきつぶしていきます
このときしっかり上から叩き込むことで、ワラどうしの摩擦力が高まり、硬くしまり、まるで板が中に入っているような硬さになります。
また叩き込むときもワラが飛び出さないように、まっすぐ調整しながら叩きます。

 

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↑ハンマーで叩き潰す箇所で一番重要な箇所はここです。
鼻緒の輪を裏でげんこつ結びにした、げんこつの箇所を平らに叩き潰して、絶対にほどけないようにします。

この画像のように真平らになるまで何度も、わらじの表側から、叩き潰します。

 

 

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↑叩くと、どうしてもワラが平らにつぶれて伸びるので、多少形が変形し、少し大きくなります。

叩き込んだあとに、全体として美しいフォルムになっているかいろんな角度からチェックします。

 

 

 

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鼻緒を通す穴の位置を決めて、はさみで、ワラを通す隙間を作ります。
このとき、鼻緒が通る位置ですが、思ったよりかかと側になります。
私は編みたてのときこの位置をよく間違い、失敗しました。

ちなみに、この位置が、つま先よりになると、幼いイメージの仕上がりになり、かかとよりになると大人っぽい上品な仕上がりになります。

ある程度は好みで調整できますが、あまりつま先よりにすると、履いていて足が痛くなったり脱げ易いわらじになってしまいます。

 

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通した二本のワラを撚って、鼻緒を作ります。
言葉で説明するのは難しいのですが、ワラをはさんで合掌した手を、左手を前に、右手を手前にずらしながら、
ワラは手前に回すというイメージです。

最初は、難しい箇所ですが、なれると簡単に誰でも出来るようになります。
また、どうしてもなれないうちは、ワラが逆に回転していき、撚り方が逆になった鼻緒になってしまいます。
逆になってしまうと、美しくないだけでなく、とてもはいていて足が痛いわらじになっていまうので注意が必要です。

 

 

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ワラを撚るときは、上に引っ張りながら撚るのですが、そのときに、せっかく硬く編みこんだ、箇所が崩れてしまわないよう、鼻緒の両側を、足の親指で押さえ込みます。

そして、上手に撚れるとこのように、手を離しても、ワラが立ちます。

 

 

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十分な長さになるまでワラを撚ります。

 

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鼻緒を通しますが、このときにしっかり、上からみて反対側の穴とまっすぐ同じ位置になるようにします。
ただし、履く人の足甲の形や高さがわかれば、その人の足に合わせて多少左右の位置を斜めにすることもあります。
自分で履くのであればこの時点で足を乗せて実際にしっくり来る位置を決めてしまうのがいいと思います。

 

 

 

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最初に通した鼻緒の隙間に向けて、上、下、と余ったワラを隙間に編みこんでいき、最後に余ったワラを切り落とします。

 

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鼻緒を通した箇所を叩き込みます。
鼻緒を通すと鼻緒の一列分、わらじが大きくなりますので、片足分を作って、それにサイズをあわすときなどは、その大きさの分小さめに編むようにしておきます。
このときにもう一度、飛び上がっている箇所やゆるい箇所、変形した箇所もしっかり叩き込みます。

 

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形が出来上がりました。
いろんな角度から、バランスをチェックします

 

 

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わらじの製作に使った道具をもう一度紹介しておきます。
蝋とはさみ、ハンマー、ワラ、たたき台だけしか使いません。

 

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最後の仕上げで、ワラのヒゲを燃やします。
編んでいるとどうしても、ワラがほつれて毛羽立ちますが、この毛羽立ったヒゲをそのままにすると、履いていて履き心地が悪くなる原因になるので、ストーブや、ライターなどで軽くあぶります。

 

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左右ならべてみました。
最初は、この左右の大きさや形をあわせるのにとても苦労すると思います。
コツは片一方を先に仕上げてしまい、その片一方をすぐ手元において何度も形を見て触って確認しながら仕上げます。

すると同じ形に出来上がります。

私の文章力では、とてもわかりにくい箇所もあったと思います。
わらじを編むということ自体は、そんなに難しい技術が必要なわけではなく、少し工夫すれば、誰でもオリジナルの編み方ができるところが、わらじ作りの魅力でもあります。

実際私も手取り、足取り教えてもらったことはありませんでしたが、四足ほど編むとコツのようなものをつかんできます。

是非ご興味をもたれましたら、お手元にある身近なものでチャレンジしてみてください。

フィリピンで、私は毎日自分で編んだわらじで歩いていますが、本当にいろんな国の人に、どこで売っているんだとよく聞かれます。

これは、決して私の技術力が高いから、ほしいと思っているわけではなくわれわれの偉大な先人たちがが生活の中で長年かけて作られたこのわらじというデザインが世界で通用するほど、とても魅力的だからだと思います。

最後に私の父が言っていた、手作りわらじに対する思いの言葉でしめくくらさせていただきます。

 

「自分が編んだ手作りわらじが健康にいいかどうかは、わからない。

ただ、履いていると気持ちいのは間違いない。

気持ちがいいと、ずっと歩きたくなる。
歩きたくなるから、たくさん歩く。

だから心と身体の健康にいい気がするんだな笑」

最後まで私の駄文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。

征太郎

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征太郎 プロフィール

 

 

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わらじの制作 3

前回かかとを仕上げる直前まで仕上げてましたので、今回はかかとの部分の仕上げと、鼻緒作りの箇所を紹介いたします。

私は、ここのかかとの仕上げからが、わらじ作りで一番面白い箇所だと思います。
かかとまでは、まったく同じではありませんが似たような編み方の繰り返し作業でしたが、かかとの仕上げから鼻緒をつけると、とてもわらじの雰囲気が出てきて、わらじを編んでいる実感もわくと思います。

そして、ここからの形の調整が腕の見せ所にもなりますが、履物としての一番重要な、壊れない、ほどけないの耐久性はすでにかかとの仕上げまでの編む力加減で決まってきていて、後で修正は効きません。
緩んだ箇所がないか、編み方にばらつきがないか、もう一度チェックして、気になったらそこまで解いてやり直します。

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↑これで大丈夫そうだと決心したらかかとを仕上げます。
かかとの部分は、かなりの力が加わりますので、丈夫に仕上げます。
歩き方にもよりますが実際履いていて、一番先に擦り切れてだめになってくるのはかかとがほとんどです。

かかとの部分には、耐久性を持たせるため私は意識して、同じロールのわら束の中から少しでも径の太い箇所を選んで使っています。
今まで編んだ箇所をこの写真のように、ぐるぐるっと、幅の半分ほどまで、巻いていき、今まで足の親指にかけていたわらの下を通してつまさきで拳骨結びにしていた、ひげをほどき引っ張るのですが、とても力が要ります。
最初に蝋をぬったのは引っ張るのを少しでも補助するためです。

蝋を塗らずに引っ張ろうとしても編む力にもよりますが、アバカで編むと摩擦が強すぎまず引っ張れません。
また、引っ張るときに、ある程度ひげの部分に長さが残っていないと、非常に引っ張るのが難しいです。
女性の方や、お子様や、握力に自信のない方が引っ張るときは、木の短い棒や、吊り輪のようなものなどをひげの部分にまきつけたり縛ったりして引っ張ると、力が入りやすくなり引っ張りやすくなります。

またひげの部分は交差してあるので、左のかかとの部分を引っ張りたければ右側のひげ、右のかかとであれば左側のひげとなります

引っ張るときに重要なのは、絶対につま先とかかとの部分から目を離さず形が崩れないようにすることつま先の部分の形が崩れないよう足の親指でしっかり押さえ込むことです。

 

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バランスよく引っ張ると、わらじらしい形になります。
また引っ張ると思っているより小さくなりますので、この引っ張った後のサイズを考えて、少し大きめに編んだほうがいいです。
わらじ作りで難しいのは左足と右足のサイズや形を同じにすることですが、その原因はここにあります。

 

 

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裏返して、継ぎ足した部分の余りや、つま先の部分の余りを切り取ります。
このとき継ぎ足した部分の余りは2本そろえて切ったほうが、あとで履いたときにお互いにかみ合って、より強固なわらじになってくれます

 

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自分の足をのせて、鼻緒の位置を確認してみます。
履くひとのサイズとはもちろん違いますが、鼻緒の位置が大きく変わることはありませんので自分の足の隙間を基準に考えても大丈夫です。

 

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鼻緒の位置がきまったら、鼻緒を通す位置に、はさみを差込み鼻緒をさしこむ隙間をつくります

 

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左足用なら、左側のひげ、右足ようなら右側のひげを鼻緒にするため裏から通し、網目一つ分のところで表から裏に戻し輪を作ります

 

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作ったわっかの部分に指をとおして、輪の大きさを調整します。
足を乗っけてみて、履く人の足の甲の高さを想像したりしながら調整をします。
輪の大きさが決まったら、余ったもう片一方のひげを裏にそのままもっていき、げんこつ結びで二重に縛ります。
この部分もとても大きな力が加わる箇所なので、二度と解けないようきつく縛りあげます。

このとき片手は常に、鼻緒の輪に指を突っ込んでいなければいけないので、口をつかって強く縛り上げますが、
私の父いわく、歯が抜けることもあるようで、歯が弱い人にはあまりお勧めできないそうです。
私は、人生で一度も虫歯になったことがない丈夫な歯の持ち主ですので、歯で縛りますがそれでも確かに抜けそうな気がします(笑)
(実際私の父は何年もこれをした結果入れ歯になりました)

では、入れ歯になった父はどうしているかというと、ひざを使って上から押さえつけ、片手で片方ずつ縛り上げていますが、やはり歯でしたほうが、きつくしまるそうです。

 

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きつく縛れたら、鼻緒の輪が少し小さくなると思います。
その分上に引っ張り上げ輪を大きくします。

 

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あまったひげの部分をはみ出さない程度に切ります。

 

 

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ここから、仕上げ作業に入っていきますが、まず、はさみなどのとがったものの先端を使って、ゆがんだ箇所や、飛び出ているわらを中に押し込んで、わらじの足の形に調整していきます。
私のはさみは、最初から、角を落としてあったのでそのまま使っていますが、余り尖りすぎているものを使ってすると、ワラを痛めますので、先を砥石やグランダーにかけて少し丸めておくことをお勧めします。

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わらじの制作 2

前回からかなりお時間が空いてしまいました。

実は、あの記事を書いてから、嬉しいことに義父ではなく私にわらじの注文が5足ほどいただき、わらじ作りと仏像彫刻だけに専念しておりました。
注文のわらじを作る前に、久しぶりに義父を訪ね、注文を受けた報告をすると家の奥からアバカのわらを取り出して、「一足編んでみろ」と言われました。
義父のきびしいまなざしの中、わらじを編むのはとても緊張しましたが、編んだわらじをみて、一言「いいんじゃねぇか」との言葉を賜りました。

その言葉は職人の世界に少しでも身をおいたことのある人なら、どれほどの深い想いと意味がこめられた一言であるかは想像がつくと思います。

その後義父より「お前は自分の編んだものを最後まで責任もってやれ」と訓示をいただきました。

実は義父のわらじは、永久無料修理をしています「free repair forever ] 義父の口癖です。
どんなに痛んでいても、必ず直す。

義父のわらじは日本人の金銭感覚では、高い金額で売っているものではないけれど、フィリピン人にはとても高価な買い物になります
私は義父の家で12年履きこんでくれたわらじを見たことがあります。

アバカがまるで別の材料のようにやわらかくなじんでいて、履いてみましたが、持ち主の足以外決して受け付けないワラジになってました。

私のワラジがここまではきこんでもらえるものになるかは私の腕次第。
私のワラジは残念ながら今はお代金を受け取れるクオリティのものは作れないので、はいていただける方に、正直に感想をいってもらうことを条件に差し上げております。

そして、修理を続け改善を続けることで、美しく、手放したくないワラジを作れるようになります。

前置きが長くなりましたが、早速続きを始めさせていただきます。

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継ぎ足した藁を使って同じように編みこんでいきますが、継ぎ足した藁が抜けないように、しっかりと手前に引き込みながら、編んでいきます。

 

 

 

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↑この写真に写っているように、左手の指を使ってしっかりとつま先方向に力を加えます。
そしてこのくらい編めるとつま先の形が決まってくるので、右足用にするか左足用にするかを
決めますが、この段階ではあまり意識しすぎて、形を作らないようにします。

 

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↑写真でも伝わるかと思いますが、相当足を前に出し、手を手前に引き締め上げるので、
慣れていても足の指はかなり痛みます。もし初めてチャレンジされるのであれば日本の藁や、布などの
やわらかい素材で始めたほうがいいと思います。

 

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↑手前だけでなく、両端の藁を片一方ずつ引っ張って、左右のバランスを整えます。

 

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この段階で大事なことは出来るだけ、両端の藁がまっすぐに整い、骨組みとなる藁が見えないように
しっかりと編みこむことを意識します。ここをおろそかにしてしまうと、後でやり直しになります。
ただ、多少は後で調整できます。

 

 

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↑引っ張るときの手の形です。私は両手を使って全体重をかけて引っ張ります。

 

 

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↑一列編んではあらゆる方向からつま先の形を崩さないように良く見て
引っ張るを繰り返していきます

 

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↑私がワラジを編んでいると我が家のネコ達が必ず藁束の中で遊びだします。
アバカにはマタタビのような効果があるのかも知れません。
余談ですが、わらじを履いていると、野良猫がたくさん寄ってきます。
そのおかげかどうかわかりませんが気づけば我が家には三匹のネコが住み着きました

 

 

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↑この写真は悪い例です。引っ張るときに足の左右がそろってません。
足の間が痛いとどうしても、左右均等の力が出せなくなってしまいます。

 

 

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↑このあたりまで編めてくると徐々に足を開いて、わらじの幅を出す動きを小さくしていきます。

 

 

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↑先ほどのネコとは別のネコがやってきました。
藁で遊んでいたのですが、眠くなったようで、とても邪魔なところで
眠りだしましたが、起こすのも忍びないので、場所を少し移動します。

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あとはかかとの仕上げをすれば、わらじの基本部分が完成です。

 

 

 

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わらじの制作 1 

 

いつもブログ造佛記をご拝見いただき誠にありがとうございます。
造佛記の英訳を担当させていただいております征太郎(セイタロウ)と申します。

今回は、海外のものづくりのご紹介をさせていただく、第一弾として、わらじ作りをご紹介させていただきます。

海外なのになぜ、わらじと不思議に思う方もいらっしゃると思いますが、実はこの記事で紹介しているわらじは実際にフィリピン国で日系アメリカ人の私の義父の手作りのワラジで、フィリピン国で実際に販売しているものです。

私の義父はわらじ作りをはじめて30年のベテランですので、今回の記事にする提案をさせていただいたのですが、恥ずかしいのか、「セイタロウ、お前がやれ」とのことですので、誠に恐れながらまだわらじ作りを始めて一ヶ月目の未熟な私がご紹介させていただく運びとなりました。

所先輩の皆様方から見るととてもお粗末な内容になっているかも知れませんが、暖かく見守っていただけましたら幸いでございます。

それでは、早速始めさせていただきます。

 

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上記の画像は、わらじ作りに使う道具一式です。
左から順に紹介させていただきますと、左端のものがたたき台代わりに使う木の切り株です。
これは、実は昨年度、とても大規模な台風が私の住んでいるフィリピンの町を襲ったのですがそのときに
倒れてしまった木を使っております。

年輪を数えましたら数えれる範囲だけでも80年の風雪に耐えた、私より大先輩の木でしたので、捨てるのは忍びなく、何かに使えるのではと、もらってきたものです。
もちろんたたき台は木の切り株である必要はまったくありませんので、丈夫で床を傷めないものならなんでも代用できます。

その隣はハンマーですが、実はフィリピンでは日本のような頭だけで売っている玄翁を見かけたことがない上、柄のすげ方もぜんぜん違うので、柄を自分で取り替えることも出来ません。

さらにその柄もプラスティック製や金属にゴムを張ったものばかりで
柄が木だけで出来ているものを探すのに苦労しました。

私のこのハンマーは金工用ですが、写真では黒く写っている柄の下部が別の材料のように見えますが、黒く色を塗っているだけで、一本の木から削りだした樫の柄がついています

ハンマーの右上にある、小さな丸いビンに入っているものは、蜂蜜のビンにろうそくを溶かして固めたもので、ワラのすべりをよくするために使います。
これは、我が家で仏壇に供えるろうそくの台が無かったので、その場しのぎで代用しているうちに自然と燃えカスが固まってこのように出来上がりました。

ビンの下に写っているハサミのようなものは、本来は何に使う道具なのかわかりませんが、丈夫そうなのでハサミ代わりに使ってます。

日本だとよい鋼を使った裁ちばさみが簡単に入手できると思うのですが、この国では残念ながら見かけませんのでこうしたものを代用します。

この写真に撮影するのを忘れてしまいましたが、之とは別に日本の100円ショップのような店で買ったはさみも使います。
ただ、理由があって使い分けているのではなく、実はこの写真に写っているハサミのような道具は先が太すぎ、わらの微調整で
先を隙間に突っ込むのが使いにくいから使っているだけです。
最後に右端に移っているのが、肝心のワラで、アバカというマニラ麻です
実はこのアバカ、フィリピンの特産品として輸出され、さまざまな場所で見かけることがあります。

最大の特徴は、丈夫であることです。
日光や水分にとてもつ強く、ちょっとやそっとでは痛まない上、水によく浮き熱を加えると柔かくなり、水分を吸い込んだ後、乾燥するとぎゅっと固くなる性質を持っています。

こうした性質が、船舶の係留用のロープに最適なようで、昔の帆船の碇をしばる縄にも使われていたそうです。
そして、なんと丈夫な性質から今の日本の紙幣にも使われています。

わらじの材料としてこれ以上最適なものはないのではないかと思えるほど素晴らしい素材です。

アバカで編んだワラジを私は日常生活で、荒れ果てたフィリピンのアスファルトの上で毎日はいていますが、破れたり、千切れたりしたことが一度もありません。

一年に一度、鼻緒を交換すれば、数年は持ちます
ちなみに底に引いているシートのようなものもアバカ製です
とても座り心地がよく、しかも滑らないので、作業中はこの上で座って作業します。

 

 

 

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↑20年前はグラムあたりの値段がが鶏肉と同じ値段だったそうですが、今では需要が増えたため豚肉と同じ値段になっています。

また、太さも種類があり、この写真の束は4ミリのものです。
基本この4ミリのものを使いますが、私の義父は編む量がとても多いので、別途3ミリの束を用意して、
その3ミリのワラをつま先に使うことで、つま先に上品な雰囲気を持たせています。

私は、4ミリのこのロールのなかでも、太さが相当ばらつきがあるので、3ミリの細さの箇所をあらかじめ切り出しておいてそれをつま先に使ってます。

それでは編み始めていきます。

 

 

 

 

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↑まずこのように足の親指と人差し指の間にワラを通してはさみます。
職人さんによっては、専用のワラを引っ掛ける木の棒がついた型をつかってワラを固定する人も
いらっしゃいますが、私たち親子は手と、足だけで編むことにこだわっています。
理由は、自分の手と足を時間をかけて道具に仕立てておけば、微妙な手先や足の指の感覚で
力加減が出来るようになり、また、ワラを引っ張って締め上げるときに足の指をつかって、ワラをしっかり固定でき万力のような力を自在に出せるようになるからです。

 

 

 

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↑ここで、先ほどのロウが登場します。
あとで、鼻緒になる部分を引っ張るのですが、相当力をこめて編みこんでいるので、
これがないと、全力でひっぱってもびくともしなくなってしまいます。

 

 

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↑足ではさんだワラとは別に、自分の腕いっぱいぐらいの長さのワラを切り出します。
この長さが編む上での基準となります。

 

 

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↑写真ではわかりにくいですが、一度手前で交差させ、左手でしっかりと固定し上から先ほど腕でいっぱいの長さに切り出したワラを使って編み始めていきます。

ちなみに、わらじ作りで一番難しいのはここです。
この部分はつま先になるのですが、ここをいかに美しく雰囲気のあるものにできるかで、仕上がりの雰囲気が大きく変わります。端的に言えば細かく編み込めば上品になり、太く荒めに編めば、男らしい雰囲気になります。

ただ、注意しなければいけないのは、どの編み方をしても、しっかりとワラをひっぱり、隙間から側面の骨組みとなる部分のワラが見えないようにしないと、とてももろいつま先になります。
そして、つま先が不完全だと歩くさいにも転倒などの危険があるので、ここは、人の命を預かる部分として
なんどもなんどもやり直しながら注意して編みます。↓

 

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↑ここで、足を横に広げて編んでいますが、こうして足を開いたり、閉じたりしながらつま先の横幅を調整
して編みます。余談ですが、なれないうちはとても、足の指の間が痛く、すぐ足がしびれてしまいますので
初めて挑戦するときは、やわらかい素材を使うか、休み休み、無理のないように挑戦してみてください。

 

 

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だいたい最初に切り出したワラが、四往復ぐらいすると、残り短くなってきて、片手だけで押さえ込むのが難しくなってきます。
そこで、ここまでにつま先の形をしっかりと作り、調整してから、抜けないように、鼻緒の部分になる、ひげ二本をきつく縛っておきます。

 

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↑編み方のコツですが、編むときは力をいれず、ふわっと重ねるように編み、一列編むたびに、しっかりと
手前だけに力をこめて、手を手前に、足を奥に突き出すイメージで体全体をつかって引っ張ります。
イメージとしては柔道の腕ひしぎ逆十字固めをかけるときのようなイメージです。

gyakujuuji

 

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その後、左右均等になるよう、側面のワラをしっかり手前に引き寄せ調整します

 

 

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↑ワラが足りなくなったら、また腕いっぱいの広さにわらを切り出します。
編み終わりの箇所は、最後まで編まず一つ手前の下面にワラを出して終わるようにします。
継ぎ足すときに縛ることはしません。

 

 

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↑継ぎ足したら、同じように編み続けます。

続く。