仏像の横顔と耳の彫り方 1

まずは動画から

今回は仏像の横顔、特に耳を中心に写真を使って彫刻の進め方をご紹介していいければと思います。

 

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いつも書いていますが、仏像の耳は前面から奥に耳の中心を走る線までの長さが一つになります。

一つというのは顔の幅の3分の2になります。

いつもは、細かい耳の穴周辺などの複雑な部分まで絵を描かず輪郭線だけなのですが、今回は細かく描いてみます。

 

 

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しばらく耳には彫刻を施していませんが、今顔が四角い状態だと耳を彫ってもレリーフのようになってしまいます。

顔が丸くなるにともない耳を少しずつ彫ります。

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ここで初めて耳たぶの後ろの首筋を薄らと彫っています。

 

 

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それからさらに顔の周辺が彫り進むとともに耳たぶを大きく残しながら彫りだします。

 

 

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耳たぶを大きく残すのも、顔の形状は最初から決まっているとはいえ、顔の表情を修正する事もあります。

顔の表情を修正すると耳の角度も若干変わります。

顔が下を向くと耳たぶは斜め上に傾きます。

修正を想定して、表情が徐々に見えてきたら同時に耳も彫り進めます。

 

 

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しばらくは顔の表情を彫り進めます。

 

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このぐらいからようやく耳の高さを決めます。

上の画像のように耳の上の輪郭線に切り込みを入れています。

 

 

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切り込みを入れると後頭部の彫刻が進みます。

 

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前から見て耳タブが内側に流れます。

あまりへこませすぎないように注意します。

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前から見ると耳たぶの幅を若干内側に寄せています。

 

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お地蔵さんの後頭部の彫刻

仏像の後頭部の彫刻の行程の写真はかなり少ないように思います。

そんな私もかなり仏像の制作行程の写真をアップしている方だと思いますが、それでも仏さんの後ろ姿は少なくなります。

今回、初めて後ろをメインにお地蔵さんの後ろ姿の彫刻を取り上げてみたいと思います。

後ろ姿を確認していると、こぶが二つついています。

今回はつけた彫刻をしてみますが、つけなくても良いです。

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ざっくりと彫刻を進めたところからスタートします。

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後頭部では耳との境目と首と二つのこぶのへこみの位置を決めて彫り込むと、少し後頭部としての雰囲気が出てきます。

そしてこの辺りから二つのこぶの段差をわずかに彫ります。

 

 

 

 

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大まかに、全体的に荒彫りが出来ましたので今度はこぶをしっかりとつけていきます。

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浅い丸刀を使ってサイドから徐々に内側に向けてこぶを削りだしています。

 

 

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大まかに彫ることができたら、ならしていきます。

 

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このあたりから、あまり分けすぎないようにして真ん中に刻みを入れて二つに分けます。

 

 

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徐々に細かい彫刻のタッチにしていき、彫り面を細かくしながら仕上げていきます。

 

 

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完成

彫刻前のお地蔵さんのお顔の作図

まずはYouTubeより

今回はお地蔵さんの作図をします。

彫刻でも作図でもお地蔵さんを選ぶ理由は、表情に集中できるからです。

そして髪がないのでシンプルでごまかしが効きません。

よく装飾が多く細部にまで徹底してこだわった方が良いように思われがちですが、たとえシンプルでも仏さんらしいフォルムをとらえて気品のある柔和な表情をとらえる事のほうが非常に難しいように思います。

これから描くお地蔵さんの仏頭ですが試しに描かれると、その経験が彫刻にも生かされると思います。

 

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まず上図の絵は何年も前から少しずつ描いては消してと繰り返して現在に至っています。

こういう修正と加筆が大変ためになります。

そして今から描くのは上の絵を参考に描いていたいと思います。

 

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まずは、スケッチブックに鉛筆にシャープペン(0.3㍉)を中心にそろえてみました。

 

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まずは真ん中に線を引きます。

 

 

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次に額口を決めてそこから上に半の長さが頭頂です。

一つが9センチにしました。

半が4.5センチになります。

幅は一つ半なので13.5センチになります。

額口から下に一つのところが口の部分です。

縦の総高が2つ半になります。

 

 

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まずはアウトラインの耳からうっすらと修正がきくように描きます。

次に頭頂のラインを描きます。

 

 

 

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そして目もうっすらと描きます。

目は少しのラインの変化で見た目が変わりますので消しゴムで簡単に消せる程度にします。

 

 

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目を描いてから口の位置を意識しながら鼻を描きます。

 

 

 

 

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鼻のすぐ下にラインが重なるように口を描きます。

微妙なところですが、鼻と口は離れすぎないように注意します。

鼻と目の位置関係は、鼻から目がとおざかるほど大人の顔になります。

鼻と目が近づくと童子のような表情に近づきます。

お地蔵様なので、その微妙なさじ加減で子供のような表情でも大人の凛々しい顔にしてもどちらでも良いと思います。

 

 

 

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薄らと目鼻口全体の線を決めずに描き込みます。

 

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鼻を消して少し少し上げます。

これは彫刻の癖で、最初に鼻の位置を下に描いていました。

 

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鼻を彫刻するように少し上にしました。

 

 

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目を描きます。

目が入る事で全体のバランスが見えてきます。

 

 

 

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定朝さんのお地蔵さんを確認していました。

私は定朝さんのお地蔵さんが一番、現存するお地蔵さんのなかで優雅だと思います。

 

 

 

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次に快慶作の地蔵菩薩像をかくにんしました。

快慶さんの仏像は大変繊細です。

 

 

 

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仏画も大変貴重な資料です。

 

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線はすべて同じ太さで同じ濃さにすると面白みがないので目頭と眉毛と輪郭線は特に濃く描きます。

 

 

 

 

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細かな修正をしていきます。

 

 

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最後に消しゴムで余分な線を消して描き残しがないかチェックして薄いところなどを見つけたらさらに描きこみます。

 

 

 

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完成

日本では美しい造形美を新しく生み出すのは難しいのだろうか

三人よれば文殊の知恵と言われるように多くの人が携われば携わる程、内容が洗練されたすばらしい物ができるのだろうかどうか、疑問に思うときがあります。

私はどちらかというと、議論自体意味がないように思う事の方が多く、そのほとんどは調整に時間や力を使ったりしているようにも感じます。

また根回しなどが横行している場合、議論自体は形だけになります。

そういう私が団体行動する場合は、出来るだけスムーズに進むように自分の意見は言わずに、団体が向かう方向に合わせて振る舞うのではないだろうかと思います。

そうしなければ全く進まず、何も出来なくなるからです。

団結力の強い日本の平均的な物作りにおいてはクオリティーは常にどの国よりもトップレベルにあり世界一と言われる工業技術を生み出す国民性なのかもしれません。

高い工業技術を生み出す陰にはもしかしたら、長い労働時間や品質要求の高い基準に耐えられなくてそこに携わる人達が最悪の場合鬱になる副作用もあるのかもしれません。

日本の平均的なサービスにおいては、世界のどの国よりも高いレベルで提供され世界中の人々が日本に観光に訪れると大変満足して帰られ、また日本に訪れたいと思われる人も多いように思います。

しかし金額以上の高いサービスを提供しようと思えばその下で働く人々は大変な苦労をする事になります。

ヨーロッパなどは休みが多く、働く人にとっては大変ゆったりと生活出来ているように思えます。

その分自分の好きな事に時間を使い人生を楽しんで生きているように思います。

その反面サービスは最悪だったりします。

平均的なサービスがそれほど高くないヨーロッパに置いて、ヨーロッパのラグジュアリーブランドが世界中で人々を魅了し、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニなどの超高級外車が生み出されたりという矛盾が起こります。

日本のような高い工業技術や職人の高い技術力があり、なおかつ一人一人が平均以上の働きをする国民性にもかかわらず、超高級というカテゴリーになるとなぜかイメージが結びつかなくなります。

しかし、一人の日本人の力はどれだけすごいのかと感じる時があります。

最近知ったのですが、深谷さんという日本人の方がいらっしゃいます。

その方は本場イタリアでトップレベルの靴を手がけられておられます。

そんな深谷さんも当初は本場イタリアで修行を重ねてこられたのですがその陰では想像以上の苦労を重ねていらっしゃったようです。

深谷さんの作られる美しい靴のフォルムと繊細な高い技術力が融合して美と質がそろった、大変すばらしい靴が生み出され日本人のすごさを垣間見ることができました。

これがもし一人ではなく二人三人と沢山の人が集まって作られたとしたら果たして美と質がそろったすばらしい物が出来上がったのだろうかと疑問に思います。

人が集まりグループになればなるほど、中立的な意見にまとまり、小さく納まるというのが常にあって、それが平均以上の技術力をキープするという良さでもあり、また超高級品が生み出せない側面もあるように思います。

あのランボルギーニのような美しいフォルムも院政期の仏像のような美しい仏像のフォルム、新しく生み出されるすばらしい造形、古くから守り受け継がれてきた美しい造形美など一体どうしたら生まれるのだろうかとふと思ったりします。

必死に働き高い技術を追い求めても、美しいフォルムが生み出されにくく、またのんびり過ごして美しい風景を眺めるだけでも、美しい造形を再現する技術が不足していたりと、世の中うまくいかないようになっているみたいです。

逆に簡単に出来てしまえばありがたみもなくなってしまうかもしれませんが。

様々な事を思いめぐらしていくと、日本人は特に人の評価を気にすると言われていますが、それは評価を気にして生きていかないと本当に生きていけないからかもしれません。

村八分にされ、どこに行く当てもなく、つまはじきにされてしまう。

それは日本で生きていくには死を意味する事なのかもしれません。

現在では村八分にされる事は、よっぽどの事がない限り難しいと思いますが、昔のそういった仲間意識が遺伝子に継承され、本能的に長い物に巻かれなければ生きていけないというような防御本能がはたらいているのかもしれません。

そういった環境のもとで、自分らしさや自分の才能を見つけ出すのは難しいのかもしれません。

もしかしたら個人個人は、自分の事を薄らとは気付いているのだけど、知ると村八分にあい、それが命に関わる危険な事だからそれ以上深く考えないようにしているのかもしれません。

私は安易に自分らしく生きた方が良いとは思いません、自分らしく生きようと思えばそれなりの覚悟が必要だと思います。

多くの人が望まないだろうし暴力ではありませんが、ちょっとした見えない圧力も大なり小なりあると思います。

それに耐えられるか、耐えられないか、耐えられないのに自分らしく生きようと思えばひどい場合本当に精神病院直行になりかねません。

そういった、団結力や我慢すること、怠けてはいけないという意識が働き、作る物に余裕がなくなりそれが平均以上のものを作り上げる日本人の素地になっているような気もしますが、その反面、超高級品が生み出されにくいのかもしれません。

私は伝統工芸に携わっていていつも疑問に思っていました。

技術においてはすばらしい職人さんが沢山いて、世界で注目されるヨーロッパ以上のラグジュアリーブランドを作れる以上の技術力があると自負しています。

しかし、部分的には注目をされているようですが、全体的に評価される事はまだむずかしいようにおもいます。

美しいデザインは、日本の物作りにおける今後の大きな課題なのかもしれません。

そういった能力は目には見えず、評価を難しくしているようにも思います。

何十年も高いレベルの技術の経験を積んでも、美しいデザインを生み出す環境が整っていないと、それらの技術が100%発揮されず勿体ないように思います。

多くの日本人が自分の心の声に素直に聞き入れ、多くのムダを心から楽しみ、質素な生活も大切ですが、贅沢な物を心から楽しむような一見無駄と思える事が、作り手の物に対する捉え方やゆとりが生まれるのではないだろうかと、ふと心の声をそのまま書いてみました。

こんな事書いたらどう周りからどう思われるのか、私は大変怖いです。(笑)

 

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プー太郎 より

 

 

 

 

仏頭の彫刻 6

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中心線と額口そして額口から唇にかけて一つ(3.63㎝)の所に印を引きます。

 

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細かく修正します。

 

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すこし顎の下を彫り、顎を高くします。

それから全体を整えます。

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首の三道の位置も若干ずらします。

 

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ここからは、細かく仕上げていきます。

 

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個人的にあまり仕上げすぎない上の画像の状態ぐらいが私は木彫としてはちょうど良いようにも思います。

 

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さらに仕上げていきます。

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首の下の円柱の表面も細かく仕上げていきます。

 

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仏頭の彫刻 5

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次に首の3段のシワ(三道)をつくります。

慣れるまではシワの作り方も難しいのですが、できるだけ薄く彫ります。

 

 

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私は早い段階で目を薄らと彫ります。

めを彫ると全体の雰囲気が見えてきます。

そこから微調整をしていくのですが、あくまでも目は目安であって修正が利くようにします。

 

 

 

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仏頭の彫刻 4

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顔の表情がざっくりと削れたら段階に応じて細かいタッチに変えて彫刻をします。

しかしあまり細かくならないようにします。

細かくしすぎると、進み具合がわかりづらくなります。

 

 

 

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後頭部の首のすぐ上に上の画像のようにこぶのような段差がついています。

こぶのような段差がついていても、ついていなくてもどちらでも良いと思います。

 

 

 

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ここからは顔の表情を決める肝心な彫刻作業になります。

 

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遠目で見て膨らみなどを意識しながら仕上げないように彫りだします。

ほっぺから顎にかけての表現は口の中を基準に、そこに風船がはいっていて少し膨らましたようなイメージをしてみます。

そのイメージに近づくにはどこを彫ると膨らむのかを想像します。

 

 

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首はへこませていますが、出来るだけ顎のラインは深く彫りすぎないように注意します。

 

 

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耳の彫刻は耳の穴を基準に考えます。

耳の穴の高さは目よりも少し下にします。

耳の穴をスタートして?のようなラインを描きます。

 

 

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