水天 (梵名:Varuna ヴァルナ)
この尊像は水天(すいてん)です。
浅い青の肌色で、右手に龍索を執り、左手は拳にして腰に伏せます。
外金剛部二十天の一で、北方に位置しています。
五類天の中では地居天の一尊、種字はna(ダ)と呼びますが蛇を意味するナーガの頭文字で水と蛇は密接な関係にあります。
合掌
梵天(梵天:Brahma ブラフマー)
この尊像は梵天(ぼんてん)です。
梵天像のお姿ですが、右手に紅蓮華を持ち、左手は臍前におきます。
外金剛部二十天の一で、東方に位置します。
五類天の中では三界主の一。
十二天のとしては上方の守護を司ります。
密号の寂黙(mauna)は古代インドの修行者の総称の牟尼(muni)に由来しています。
牟尼は宇宙の根本存在である梵(ブラフマン)との一体感を求めて思索し、ひたすら沈黙の生活に徹しました。
釈尊もそのような宗教者の一人で釈迦牟尼と呼ばれています。
ブラフマンは元来ヴェーダ聖典の讃歌などの神秘的なことばを意味していました。
後に宇宙創造の神話が発達すると創造主として、生類の主(ブラージャーパティ)などが現れるに至りました。
根本原理であった梵は神格化され、梵天となりました。
梵天は宇宙の創造を司る最高位を占めます。
しかし、後世のヒンドゥー教の宇宙論では、創造・維持・破壊の中、創造の一部門を司る地位に後退しました。
梵天は仏教においては、釈尊の成道に際し、帝釈天と共に説法を懇願し、また仏教守護の善天として知られています。
仏教の世界観である須弥山世界にあっては、色界の初禅天に位置しています。
合掌
金剛牙菩薩尊像(梵名:Vajrayaksa ヴァジュラヤクシャ)
この菩薩さまは金剛牙菩薩(こんごうげぼさつ)です。
お姿は、二手を金剛拳にして、外に向け、胸に当てます。
不空成就如来の四親近のうちの一尊で、不空成就如来の東(図では下)に佇んでいます。
梵名のヴァジュラヤクシャは金剛薬叉(ヤクシャ)という意味です。
薬叉は、インドのヴェーダ以前に遡って、古くから信じられた霊的な存在です。
初期の仏教では仏法の守護神として説話や仏塔彫刻などに端正な表情をした姿で登場します。
次第に羅刹と並んで猛々しいものと見なされ、人を食べる悪鬼と信じられました。
しかし、インドの神話では怪奇ではあるけれど、悪人のみを食べ、善人を守るとも信じられ、仏教の神話に取り入れられたようです。
『金剛頂経』には、口に金剛牙を持つ尊です。
この牙で一切の魔を摧伏するので摧一切魔菩薩ともいわれ、『理趣経』などにも登場します。
合掌
金剛護菩薩尊像(梵名:Vajraraksa ヴァジュララクシャ)
この菩薩さまは金剛護菩薩(こんごうごぼさつ)です。
二本の手を胸前で金剛拳にして人差し指を伸ばし、端を相い対します。
不空成就如来の四親近のうちの一尊像です。
不空成就如来の西(画像では上)に位置します。
尊名の金剛護の「護」というのは、身を保護するものを意味します。
『金剛頂経』では、衆生界を救護し、また一切如来が金剛堅固な身を得ることであるとされています。
大乗仏教の菩薩行の理想では、菩薩は勇敢に衆生の救済に努めるのでありますが、そのためには菩薩の身を堅固に護らねばならない。
その場合に菩薩を護るのは菩薩行に努める精進であるとされました。
これが六波羅蜜のうちの精進波羅蜜です。
この尊像の密号を精進金剛としているのもそのためです。
武士が戦場で身を護るのに喩えて、甲冑で表しますが密教でも、この思想を取り入れ修法のはじめには身口意の三業を浄めて、菩薩の境地になって、甲冑を着る思いをして印契(いんけい)を結び、真言を唱えることを必ず行います。
甲冑を着て、制服し難いものに果敢に立ち向かうから、密号を難敵金剛とも呼ばれています。
また、この甲冑は菩薩行の基礎になる慈愛の心でもあるとされています。
合唱