わらじの製作の記事もいよいよ仕上げに入り今回で最後となります。
余談ではございますが、わらじはなにもアバカや、わらで編まなくてはいけないものではございません。
巷ではエコわらじといって、古着などをりようして編まれている方もたくさんいらっしゃるようです。
実際、私も今いただいた注文のお客様が、小さな女の子ということで、足が痛くなったらかわいそうだと思い
古着で鼻緒をしあげたところ、とても雰囲気のあるわらじになりました。
わらじは、編むのに何一つ、特別な道具は要りません。
必要なものは、根気と時間と手だけです。
そして、編み方は、たくさんの方法があります。
どれが正解というのはまったくないので、自分なりに、自分の足や手、使う素材にあった編み方
で編むのが一番良いと思います。
花火大会や、夏祭りが増えて浴衣などで出かける機会が増える季節になってくると思いますが、
今年は自分で編んだわらじで出かけてみるのも、粋でかっこいいと思います。
それでは、早速仕上げの説明を進めさせていただきます。
↑前回、はさみの先で飛び出たワラを押し込んで調整した後です。
このようにまっすぐなるように仕上げます
このときに初めてつま先の形の左右を意識してすこし形作るようにします
↑ハンマーを使ってたたきつぶしていきます
このときしっかり上から叩き込むことで、ワラどうしの摩擦力が高まり、硬くしまり、まるで板が中に入っているような硬さになります。
また叩き込むときもワラが飛び出さないように、まっすぐ調整しながら叩きます。
↑ハンマーで叩き潰す箇所で一番重要な箇所はここです。
鼻緒の輪を裏でげんこつ結びにした、げんこつの箇所を平らに叩き潰して、絶対にほどけないようにします。
この画像のように真平らになるまで何度も、わらじの表側から、叩き潰します。
↑叩くと、どうしてもワラが平らにつぶれて伸びるので、多少形が変形し、少し大きくなります。
叩き込んだあとに、全体として美しいフォルムになっているかいろんな角度からチェックします。
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鼻緒を通す穴の位置を決めて、はさみで、ワラを通す隙間を作ります。
このとき、鼻緒が通る位置ですが、思ったよりかかと側になります。
私は編みたてのときこの位置をよく間違い、失敗しました。
ちなみに、この位置が、つま先よりになると、幼いイメージの仕上がりになり、かかとよりになると大人っぽい上品な仕上がりになります。
ある程度は好みで調整できますが、あまりつま先よりにすると、履いていて足が痛くなったり脱げ易いわらじになってしまいます。
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通した二本のワラを撚って、鼻緒を作ります。
言葉で説明するのは難しいのですが、ワラをはさんで合掌した手を、左手を前に、右手を手前にずらしながら、
ワラは手前に回すというイメージです。
最初は、難しい箇所ですが、なれると簡単に誰でも出来るようになります。
また、どうしてもなれないうちは、ワラが逆に回転していき、撚り方が逆になった鼻緒になってしまいます。
逆になってしまうと、美しくないだけでなく、とてもはいていて足が痛いわらじになっていまうので注意が必要です。
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ワラを撚るときは、上に引っ張りながら撚るのですが、そのときに、せっかく硬く編みこんだ、箇所が崩れてしまわないよう、鼻緒の両側を、足の親指で押さえ込みます。
そして、上手に撚れるとこのように、手を離しても、ワラが立ちます。
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十分な長さになるまでワラを撚ります。
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鼻緒を通しますが、このときにしっかり、上からみて反対側の穴とまっすぐ同じ位置になるようにします。
ただし、履く人の足甲の形や高さがわかれば、その人の足に合わせて多少左右の位置を斜めにすることもあります。
自分で履くのであればこの時点で足を乗せて実際にしっくり来る位置を決めてしまうのがいいと思います。
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最初に通した鼻緒の隙間に向けて、上、下、と余ったワラを隙間に編みこんでいき、最後に余ったワラを切り落とします。
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鼻緒を通した箇所を叩き込みます。
鼻緒を通すと鼻緒の一列分、わらじが大きくなりますので、片足分を作って、それにサイズをあわすときなどは、その大きさの分小さめに編むようにしておきます。
このときにもう一度、飛び上がっている箇所やゆるい箇所、変形した箇所もしっかり叩き込みます。
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形が出来上がりました。
いろんな角度から、バランスをチェックします
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わらじの製作に使った道具をもう一度紹介しておきます。
蝋とはさみ、ハンマー、ワラ、たたき台だけしか使いません。
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最後の仕上げで、ワラのヒゲを燃やします。
編んでいるとどうしても、ワラがほつれて毛羽立ちますが、この毛羽立ったヒゲをそのままにすると、履いていて履き心地が悪くなる原因になるので、ストーブや、ライターなどで軽くあぶります。
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左右ならべてみました。
最初は、この左右の大きさや形をあわせるのにとても苦労すると思います。
コツは片一方を先に仕上げてしまい、その片一方をすぐ手元において何度も形を見て触って確認しながら仕上げます。
すると同じ形に出来上がります。
私の文章力では、とてもわかりにくい箇所もあったと思います。
わらじを編むということ自体は、そんなに難しい技術が必要なわけではなく、少し工夫すれば、誰でもオリジナルの編み方ができるところが、わらじ作りの魅力でもあります。
実際私も手取り、足取り教えてもらったことはありませんでしたが、四足ほど編むとコツのようなものをつかんできます。
是非ご興味をもたれましたら、お手元にある身近なものでチャレンジしてみてください。
フィリピンで、私は毎日自分で編んだわらじで歩いていますが、本当にいろんな国の人に、どこで売っているんだとよく聞かれます。
これは、決して私の技術力が高いから、ほしいと思っているわけではなくわれわれの偉大な先人たちがが生活の中で長年かけて作られたこのわらじというデザインが世界で通用するほど、とても魅力的だからだと思います。
最後に私の父が言っていた、手作りわらじに対する思いの言葉でしめくくらさせていただきます。
「自分が編んだ手作りわらじが健康にいいかどうかは、わからない。
ただ、履いていると気持ちいのは間違いない。
気持ちがいいと、ずっと歩きたくなる。
歩きたくなるから、たくさん歩く。
だから心と身体の健康にいい気がするんだな笑」
最後まで私の駄文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。
征太郎