仏像彫刻の道具
上の写真は、私の愛用の道具の一部です。
数えた事はないですが100本以上あるのではないかと思います。
仏像を本格的に彫る場合は彫刻刀が沢山必要になります。
仏師さんがテレビや雑誌、ネットなどで仏像を紹介している場面がありますが、その片隅にある道具に興味をもたれたりする方もおられます。
同業者ならなおさら、どんな道具だろうかと気になる所だと思います。
そんなたくさんの道具をどのように使うのか、どのような気持ちで接しているのかという事を少し掲載してみたいと思います。
他にも、彫刻刀以外に仏像を造る道具は沢山の道具があります。
掲載した画像は一部ですが、まずは沢山ある彫刻刀の中でも特に、頻繁に使う道具として印刀という下の写真のような道具があります。
使用頻度が高く、さらにその下の画像の平刀という道具も印刀に続けてよく使います。
この印刀や平刀は刃の部分に少しアールがある刃と真っすぐな刃があります。
そしてもう一つ代表的な彫刻刀として、すぐ上の画像の彫刻刀ですが、丸刀があります。
丸刀と書いてマルトウと普通は呼びますが、私たちはガントウと読んで使います。
丸刀は、彫り始めの粗彫りの段階では極力使わないようにしています。
丸刀を粗彫り段階で使用すると、木を彫りすぎてしまう恐れがあるのと、もう一つ粗彫り段階で丸刀を使いすぎると、木彫が慣れてない人のように見えてしまう場合があります。
つまり、初心者の段階では丸刀や三角刀などを粗彫り段階で使用すると、とても使いやすくて多用してしまいます。
そうすると、木彫の全体のバランスがうまくとれない事が多いのです。
かといって初めて彫る人にいきなり印刀や平刀を使って高度な彫刻を粗彫りでかっこ良く彫ってもらうのは技術的にもできない事なので、私は、楽しんで彫るぶんには何を使ってもよいと思います。
現に私も、昔は丸刀や三角刀を早い段階で使用して、彫りすぎて失敗したりしたり、どこを彫れば良いのかわからなくなってしまう経験は数えられないぐらいあります。
だれでも、沢山彫刻刀を握り、数をこなす事で手が慣れてきて粗彫りをかっこ良く見せたいという意識を持ち続けたら、いずれ粗彫りの段階でもかっこ良く彫れるようになります。
かといって全く丸刀を使わずに粗彫りをしてはいけないということはなくて、彫る対象の形状や、隙間など丸刀をつかわなければどうしようもないときもあります、そんな時は丸刀と粗彫りで使いますが、彫り始めのときは外側から内側へ彫りすすめます。
ではどうして外側から内側かというと、まず外側のアウトラインを粗彫りで彫ります、そして頭、肩、胴体、足先、と外側のアウトラインから内側に向かって彫り進めると、修正がしやすいのですが、例えば早い段階で衣を作ると、その段差がずっと残り、後で少し広げたいと考えても狭まったものは広くできないので、全体の体のバランスが決まってから、次の段階で衣のラインを考えます。
粗彫りがすんだ後、この丸刀が非常に役に立ちます。
丸刀の使い方ですが、このように小さな丸刀は仕上げの場面でよく使います。
例えば、光背の炎のへこみであったり、仏像の衣のへこみ部分や、仕上げでは沢山の種類を小刻みに変えながら使用します。
そのため、丸刀の幅は細いものから、太いものまであります。
そして同じ幅の丸刀でも、浅い丸から深い丸まであります。
中には極浅いきわめて平刀に近い丸刀を極浅丸と読んだり、また極々浅丸、などと呼ばれたりする丸刀もあります。
この平刀に近い極浅い丸刀は粗彫りにも使えます。
また丸刀だけではなく、平刀にも幅のものすごく狭い極めて細い彫刻刀もあります。
一般的に5里(1.5㍉)が細いのですが、中には3里とか、別注でさらに細い道具を手に入れる仏師さんもいます。
この極細い道具をでは、よく使う場所が髪の毛の線をいれたりします。
私は3里まではもっていますが、特に小さな仏像を彫られる仏師さんは、非常に細い道具を沢山使いこなします。
丸刀を彫るときは削るときに、少しひねりを加えます。
そうすると、彫り跡がきれいに残ります。
これは刺身を包丁で切るとき、刃の長さを利用して引きながら刺身を切るのに似ているような気がします。
他にも、特殊な彫刻刀として曲がりの彫刻刀などがあります。
同じ浅丸刀の彫刻刀ですが、左のように、刃の幅は広いのに、首は細くなっていたり、右のように一般的に良く見かける丸刀もあります。
この首が細くなっている道具が小道具と呼ばれています。
仏像の道具については、下記にリンクを張っておきます。
仏像彫刻の道具