香佛舎にアップする今回の香合佛は四角い檜(ひのき)の木にお薬師さんがレリーフで刻まれています。
その蓋は平たい状態から丸みをつけています。
今回お薬師さんを彫刻しようと思った理由ですが、私は曼荼羅を木彫で制作していますが、お薬師さんが一体もありません。
日本でもなじみのある薬師如来ですが、500体近い仏様が表現されている曼荼羅の中には一体もないというのも不思議な気持ちがします。
曼荼羅でご紹介できないということもあり、今回はお薬師さんを彫らせてもらいました。
日本に古く平安や鎌倉時代より現存するお薬師さんの中には持物である薬壺がなくなっている場合が多くあります。
それは、仕方がないといえば仕方がないのかもしれません、外れやすい持物が1000年近く左の手にずっと残っているというのは奇跡に近いと思います。
他の仏像でも言えますが、観音菩薩なら持物である蓮がなくなっていたり、不動明王の左手で持つ羂索が別のものになっていたりします。
しかし薬師如来の場合薬壺が紛失すると釈迦如来坐像と間違うことがあります。
お釈迦さんの姿もいくつか種類がありますが、その中に施無畏与願印というお姿が、薬壺を持っていないお薬師さんと同じになります。
補足ですが、人差し指を親指にくっつけて指で丸を作ると今度は阿弥陀如来坐像になります。
今回のお薬師さんの彫刻の参考にさせていただいた仏像は興福寺像(平安初期)、法隆寺像(平安時代)を主に参考にさせていただきました。
他にもいくつかありますが、大きなところではこの二体です。
法隆寺の薬師如来坐像は平安時代とかなり古いのですが、どうしてもさらに古い飛鳥時代の釈迦三尊像の陰に隠れてしまい、あまり大きく取り上げられることがありません。
法隆寺の薬師如来の台座は個人的にとても美しいと感じてみています。
派手な彫刻ではなくまた地味でもないのですが、全体の姿がまとまっていてちょうど良い塩梅でおさまっています。
それは台座の中に上から蓮台、華盤、返花、框など、それぞれのパーツの長さ、幅、厚み、遠くから見ても、どこのパーツも主張しすぎていないバランスの整った素晴らしい台座です。
法隆寺に参拝に行かれる際には是非、台座まで拝観してみてください。
また本体の説明は後日させてもらいます。
合掌