前回、開き手をご紹介しましたが、今回の握り手は開き手同様に、仏像の手の形の中で最もよく表現されています。
この二種類の手の形をきっちりとマスターをすれば、いろいろな手の表現の応用も比較的スムーズに表現できるようになります。
仏像は、お顔の表情で善し悪しが決まりますが、古くて素晴らしい仏像の多くはその手もまた素晴らしい表情をしています。
私はそんな拝みたくなるような気品のある手を目指していますが、お顔と同様に難しいところです。
拝みたくなるような手ってどういう姿なのだろうかと考えたりしますが、私がこの握り手を作るにあたって注意しているところがあります。
5本の指の中で一番しっかりと握り込んでいる指が中指です。
次に握り込んでいる指が薬指です。
軽く触れている指が人差し指と親指です。
そして力を抜いた指が小指です。
仮に全ての指に力が入ると、忿怒形のようにぎゅっと握りしめて、全体的に力が入りすぎます。
仏像を全体的に見て、手だけぎゅっと握りしめた状態だと、見ている方も力が入ります。
その反対に握り手なのに、全ての指に力が入っていない状態だと、だるい感じの印象を受けます。
全体的に仏像を見て、手だけ指に力が入っていないとやはり、疲れて力を抜いた感じに見えます。
古くて、拝みたくなるような、素晴らしい仏像に出会うと、手の力の入れ具合などの微妙なバランスが実に巧く表現されています。
どこかに力が入るとそのバランスを取るようにどこかに力を抜かせます。
その差をどのように巧みに表現するかによって、さらに深みのある仏像に仕上がるのではないだろうかと模索しています。