この段階ではまだ膝前の琵琶と左右の腕の位置がぼんやりとして定まっていません。
今の段階で正確に手の位置を定めてしまうと、全体が仕上がっていくうちに少しずらしたいと思ってしまうことがあります。
しかし一度決めてしまうと修正がききません。
そこで、手の位置を曖昧にして、修正出来るように残しておきます。
この段階で意識するところはポイントとなる出っ張りをどこに曖昧に定めるか
出っ張りというのは肘、膝、肩、です。
見方としては、顔を横から見たとき鼻の一番高いところから耳の中央までの長さがだいたい1つです。
1つというのは、膝の幅と額の上の髪の生え際までの高さが同じで5つあります。
その5分の1の長さです。
そういう事で鼻の高さが決まると、横から見たときの耳の位置が決まります。
そうすると今度は横から見たときの肩の位置がだいたい、耳よりも少し後ろにきますがその位置が見えてきます。
撥を持つ右手、と琵琶を支える左手の位置が決まると肘の位置が決まります。
これで、バランスを取るための基準が決まるので、そのときに始めて思い切って彫りだしていきます。
基本的に出っ張ったところを早い段階で押さえておくと、バランスを崩さずに、スムーズに彫り進められます。
しかし、早い段階で押さえておくと書いたものの、慣れていないと彫り進めている間に微妙にずれていきます。
そういう事がないように、常に計りながら、思い切って彫刻をするのが早くて的確に彫り上がります。
真後ろはお尻の位置、肩甲骨の位置、背中の凹凸を意識します。
仏像と人間では人間の体の方がリアルすぎるので、仏像を制作するときは、お尻、肩甲骨の位置、背中の凹凸の意識はしても、丸く角がないように彫ります。
寄木造りの原型の琵琶を持つ弁財天を彫刻 1 四角い木から線を引く
寄木造りの原型の琵琶を持つ弁財天を彫刻 2 御顔の荒彫りと膠接着
寄木造りの原型 琵琶を持つ弁財天を彫刻3 御顔の荒彫りと全体の荒彫り開始
寄木造りの原型 琵琶を持つ弁財天を彫刻4 漠然とした全体のフォルム
寄木造りの制作行程 7 目安線を彫刻 彫り進め過ぎずに彫刻する
寄木造りの原型 制作行程 8 弁財天の彫刻 手足をぼんやりと彫り進めて全体を進める
寄木造りの原型の制作行程 弁財天の彫刻 10 下図線を基準に彫刻をすすめる
寄木造りの制作行程 弁財天の彫刻 11 衣紋線などの細かな表現